美しい海だからこそできる野甫の塩
塩職人が教えてくれる野甫島の魅力

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沖縄県最北端の有人島、伊平屋島(いへやじま)と橋で結ばれた野甫島(のほじま)。どこまでも青く澄み渡る海と手付かずの自然が残された島。そんな野甫島で人生をかけて塩作りをしている職人がいるという。この美しい海からどんな塩が出来るのだろうか。そして職人を魅了したこの島の魅力とは!?

野甫大橋から観光スタート

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沖縄本島今帰仁村(なきじんそん)の運天(うんてん)港から「フェリーいへやIII」に乗って約80分。伊平屋島に近づくにつれて、青さを増す海の色に見とれてしまう。伊平屋島から車またはコミュニティバスで約15分。今回の旅のスタート地点、野甫大橋に到着。エメラルドグリーンの海に架かる、全長320メートルの曲線が美しい橋だ。運が良ければ橋の上からウミガメを見ることもできるそう。この橋を渡ったらどんな出会いがあるのだろう?胸の高鳴りを抑え、いざ野甫島へ!

素晴らしい眺望の野甫の展望台

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まず始めに向かったのは島の北東部にある野甫の展望台。先ほど渡ってきた野甫大橋と集落、伊平屋島がよく見渡せる。海の色が自然のグラデーションを作っていて、ため息が出るほど美しい。この景色を見られただけでも「野甫島に来て良かったなぁ」と旅の始まりにして思う。

絶景のすべり台

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景色を堪能して帰ろうとしたその時、ふと展望台から下りられるすべり台が付いていることに気付く。「大人もすべっていいのかなぁ」と躊躇していると、近くで遊んでいた島の子供達が背中を押してくれた。すべり台からの眺めも絶景!意外にも急な傾斜を一気にすべり下りる。思わず「きゃあっ」と声を出してしまった私を見て、島の子供達が笑っている。なんだか、野甫島に来てからわくわくしっぱなしだ。

心まで浄化してくれる野甫のビーチ

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野甫島へ渡ってすぐ左側に現れる真っ白な砂浜の通称・野甫ビーチ。潮が引いている時間、誰もいない白い波打ち際をざばざばと歩いて行ける。引いては返す波を見ていると、島に来るまで抱えていた日々の悩みまで連れ去ってくれるようだ。透き通るほど透明な海で、心まで透明になれた気がする。

世界塩の探検館ソルトクルーズ

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野甫島で一番の有名人、塩に人生をかけた塩職人がいると聞いて訪れたのは世界塩の探検館ソルトクルーズ。塩職人の松宮賢(まつみやけん)さんが世界中で集めてきた塩と塩作りに関する資料、写真がところ狭しと展示してある。日本では白い塩がメジャーだが、世界の塩は色も様々。ピンクや薄紫、黄色味を帯びたもの、真っ黒なものまで。粒一つ一つの大きさも形も、輝き方も全く違う。これは奥が深そう! 早速、松宮さんにお話を伺うことにしよう。

塩職人が語る野甫の魅力

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三重県出身で、元々はサラリーマンをしていたと言う松宮さん。ところがある日「このままの人生で本当にいいのか?」と立ち止まり、塩職人への人生がスタートする。塩分はついつい取り過ぎてしまうということで良いイメージがないこともあるが、本来は神棚に供えたりもする日本人にとって大切なもの。となれば、「人が食する為の最高の塩を作りたい」その想いだけで、塩作りの知識も何もなかったが、塩職人の道へと進むことにしたそうだ。日本中を渡り歩き、「とにかく海水が綺麗で美味かった。ここなら最高の塩ができるはず」と辿りついたのが野甫島だった。早速夫婦で移住し、手作りで2年半かけて製塩設備を完成させるがその間は無収入。その時に助けてくれたのが野甫の人たちだった。「最初は塩作りに反対されました。台風も来る土地で、気が狂っているとしか思えないって。僕もそう思います(笑)。だけど、お金がなかった時みんなが助けてくれた。魚や野菜を分けてくれて。小さい島だけど、島の人たちは家族同然なんです。」と笑顔で語る松宮さん。塩職人を始めた時の決断力もさることながら、困難があっても前を向いて立ち向かっていく姿勢は「夢を諦めないこと」の大切さをまさに体現していると感じた。「台風の時など自然は敵にもなりますが、この豊かな自然を見ていると癒されますね。裏の山には越冬の為にリュウキュウアサギマダラという蝶々が集団で訪れて圧巻です。それに、自宅の目の前が海なので絶景のオーシャンビューなんですよ!」と、塩だけではなく野甫島の自然にも惚れ込んでいる様子の松宮さん。

全国にファンがいる野甫の塩

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火入れをせず太陽と風の力だけで結晶化させ、毎日7時間以上手揉みをして作る松宮さんの丹精込めた塩。松宮さんの手の平には手揉みでできたマメが。

「20年、無我夢中でやってきました。20年経ってやっと、身震いするようなすごい塩ができる瞬間がある。そんな時に疲れが吹っ飛ぶんです。」全国各地に大勢のファンがいる松宮さんの塩は、三ツ星レストランでも使われている。それでもなお、「理想にはまだ遠い。季節によって塩の味が違うので一番いい塩だけを集め、科学的な検証も含めて最高の塩を作りたい。思った瞬間に次に歩き出さなきゃいけないですから」と話す松宮さん。塩への情熱、そして一度やると決めたことを貫き続け、常に上を目指す意志の強さ。松宮さんの言葉の一つ一つが、心に響く。

野甫の塩

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そんな松宮さんの塩、「塩夢寿美(えんむすび)」は世界塩の探検館ソルトクルーズに併設されている直売店か、通販で買うことができる。まろやかでコクのある旨味が特徴で、おむすびや魚の塩焼きに使うのがおすすめとのこと。他にも香味がユニークな島こしょうピパーツ(ヒハツモドキ)をミックスした「ピパーズ塩」や、オリジナルスパイスを調合した「カレー塩」、沖縄産シークヮーサーと島青唐辛子を使った「爽快ピリ辛ブレンド」などラインナップも豊富。野甫島の思い出として、ぜひお土産に買って帰りたい。

沖縄本島の北に浮かぶ小さな島で出会った透き通るほど綺麗な海。そして、その海と職人の夢からできた塩。白く輝く小さな塩の粒を見ていると、今日も塩作りに汗を流しているであろう松宮さんの顔が目に浮かび「私も頑張らないと!」そんな気持ちにさせてくれる。

 

Information 基本情報

倶楽部 野甫の塩

住所 沖縄県島尻郡伊平屋村野甫396-1
TEL 0980-46-2180
備考 営業時間 13時~18時(日曜日は8時~13時)
定休日 火・水、年末年始
入館無料
URL http://www.cam.hi-ho.ne.jp/nohonoshio/hpnohonoshio_001.htm
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