沖縄・伊是名島の祭り”ウンナー”に潜入取材!

沖縄・伊是名島の祭り”ウンナー”に潜入取材!

人口1200人の小さな島で行われる伝統行事
「ウンナー」をご存じでしょうか。
五穀豊穣と地域の安寧を祈願する大切な祭りで、100年以上前から受け継がれてきました。
昔は当たり前だった人と人との繋がり。
現代社会で薄れてしまった地域コミュニティ。
それらのすべてが凝縮された、生命力あふれる祭りが伊是名島で行われています。
今回は、勢理客という地区のウンナー祭りに参加してきました。

陽が傾きはじめると、島が動き出す

空は晴天。
祭りにむけて、人々の高揚感が伝わる午後6時ごろ。
公民館前の芝生の上では、慣れた手つきで藁を編む人々がいました。
周りには頭や腰に編まれた藁を結びつける人々で賑わっています。

今回参加したのは、伊是名島の「勢理客」と呼ばれる地区のウンナーで、 内花を除く4字(伊是名・勢理客・諸見・仲田)で行われる豊年祭です。
メインは、大綱引き。
米の収穫を終えた後に、藁を集めて編みこみ、大綱に結び付ける。
豊作に感謝し、また五穀豊穣を願って盛大に綱を引きあいます。

いきなり三線の音が聞こえてきたかと思うと、一斗缶を叩く音と、掛け声が!
これからどんな祭りが始まるのだろうとワクワクしてきました。

大勢の人が中心に近づいたり遠ざかったり。
まるで波のように、お互いを鼓舞するよう歌い踊りはじめます。
片手には泡盛や缶チューハイ。
最初は恥ずかしくても、気がついたら
輪の中でみんなと一緒に踊っていました。

陽が沈みかけると、人々がぞろぞろと歩き始めました。
ここからは、むらがーえーが始まります。

歌と踊りで練り歩く。泡盛は降ってくる?!

むらがーえーでは、地域の拝所を巡ったあとに東西に分かれて、お祝い事があった家や、地域の長の家を練り歩いていきます。
行く先々では軽食やお酒が振舞われ、皆で飲み交わし、歌い、踊り続けるのです。

少しずつあたりは暗くなり、ボルテージが高まってくると人々が手にする泡盛がこぼれ出し、雨のように降りかかってきました。
掛け声もより一層、大きくなっていきます。  
 \サーヤッサ!  ハドゥウェイ!/
  \サーヤッサ!  ハドゥウェイ!/
誰でも関係なく、泡盛を浴びて、また踊る。
島民でない人たちも一緒になって楽しんでいました。

「東西は、どのように分かれているんですか?」
地謡を務める方に聞いてみると、
「詳しくは分からないけど、昔から、ここからは東、西と決まっていたんだよ」
とのこと。
開催される地域によっても東西の分け方はいろいろあるらしく、それほど長い間、大切にされてきたお祭りなのだと感じました。

むらがーえーが始まって約2時間。
再び最初の公民館前に戻ってくると、 西側の人々も集まってきて、始まった時よりも大きな掛け声でお互いを鼓舞し合います。
掛け声にのせて、東西の人々が中心に向かって波のように押し寄せてきます。
ウンナーがーえーが始まりました。

メインの大綱引きに向けて、人々の熱狂は増していくばかり。
地謡のカチャーシーに引き立てられて、
踊る、踊る。
人々の波は何度も続き、やがて落ち着くと、
広い芝生へと移動してきました。

いよいよ祭りも終盤!島民たちの熱い戦い

先ほどの芝生では、藁に火が灯され、囂々と燃えており辺りは熱気を帯びています。

すると、青年たちがなにやら畳の上に担ぎ上げられ‥‥!
東西に分かれて、二人の青年たちが掴み合う「スナイ」が始まりました。
畳の下では男性たちが支え、歓声や拍手で青年たちを鼓舞します。

勢理客ウンナーでは、実際に掴み落としあうことはありませんでしたが、ほかの地区では激しい掴み合いが行われるのだとか…
東西を代表する青年たちの熱い戦いに観客も大盛り上がりです。
そして、いよいよメインの大綱引き!
東西それぞれで編んだ綱を元綱に結び付けて、ひとつの大きな綱が完成します。
その長さは約40mほど。

スタートの合図とともに、
皆が一斉に綱を引っ張り合います!
小さな子供も大人も関係なく、島民一丸となって力強く引っ張ります。
今回は東(アガリ)チームの勝ち!
その後は、ちびっ子たちの相撲大会が始まります。

綱を丸く円状にして、
中には砂が敷かれています。
まだ5歳くらいの子どもから中学生や大人まで!
みんなでワイワイ相撲を取っている様子が印象的でした。

勝ったら収穫したばかりの新米やお菓子などの景品がもらえます。
「やった!お米がもらえたね」
喜ぶお母さんに対して、、
「えー、お菓子が良かった~」
とふくれっ面の子ども。
地域みんなで子どもを育てていく、
昔ながらの家族の在り方を感じられるような景色が広がっていました。

夏の夜風と共に歌い踊る

月も高く昇り、
1日の終わりに差し掛かるころ。
別の綱の円上では、お酒を飲みながら、三線や太鼓の音にのせて踊っている人々の姿がありました。
このお祭りを締めくくる、もーあしびーです。

「みんな好きな曲を歌っていいんだよ、誰が弾いてもOKさ」
ニコッと笑って話すおじーは、島で過ごしてきたのが伝わる優しそうな雰囲気。
三線を弾く人も決まりはないらしく、色々な人達が代わるがわる手に取り、弾いています。
子どもたちは相撲が終わると少しずつお帰路につき、ここからは、大人が愉しむ時間です。

「お酒は足りてるか?」
「どんどん歌えー」
綱の上に座っていると一緒に踊ろうと引く手あまた。
ここでは、みんなが自由に音を楽しめる場所。
島民も島外の人々も関係なく、
思い思いに踊っています。

やがて時計の針は12時をまわり
少しずつ穏やかな雰囲気になってきたころ。
お祭りの幕が閉じます。
「もっと夜が明けるまでやるときもあるよー」
と話すおじーも少しだけ名残惜しそう。
けれど、みなさんなんだか満足そうな表情で
帰っていきます。

盛大に始まったウンナー祭り。
そこには、島民もそうでない人も
分け隔てなく受け入れてくれる
伊是名島の優しい人々の姿がありました。

末永く島が豊かでありますように。
人々の願いが詰まった賑やかな伝統行事は、
また来年。
ウンナーが紡ぐ人々の繋がりは途切れることなく、これからも受け継がれていきます。

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