「神様のいる島」大神島で美しい自然に感謝する旅

「神様のいる島」と称される大神島

宮古島から4キロほど離れた位置にある大神島は、「神様のいる島」と称される島。
古くから守り継がれてきた文化と、ありのままの美しい自然が今も豊かに息づいている。
島の人々は日々の暮らしのなかで「すべてのものにありがとう」という意味を持つ「アタカムタカ」という言葉をよく口にし、身の回りにあるものを大切にしてきたそうだ。
大神島を訪れる際は、島の暮らしとその文化、そして自然へ敬意を払い、「アタカムタカ」の心で、安らかなひとときを楽しみたい。

 

散策は島のガイドさんと一緒に

島尻港から出発して15分。大神漁港へ到着

島の大部分が聖域とされている大神島。立ち入ってはならない場所も多く、初めて訪れるなら、島のガイドさんに観光案内をお願いしよう。

宮古島の島尻漁港から船に乗り込む。大神島への唯一の交通手段が、この連絡船「スマヌかりゆす」。船内で配られた大神島についてのリーフレットを読み、島の成り立ちやルールを予習していると、15分ほどで大神漁港に到着。港ではガイドの下地(しもじ)さんが笑顔で迎えてくれた。

 

大神島案内板

「大神島は周囲が3kmもない小さな島です。病院や郵便局はないですし、公道もなく、道はこの地図のグレーの部分だけ。歩いて移動しますが、道のないところには入らないでくださいね」と下地さん。島の見どころをひととおり案内図で確認して、さっそく散策に出発!

 

島まもりの神様にご挨拶

港にある拝所「竜宮神」へご挨拶

島内に入る前に、港にある拝所で竜宮神にご挨拶。港を建設する際に崩した岩のかけらが祀られており、昔から島の人々はここで旅や船の安全を祈願してきたという。

 

昔から島の人たちが神様として祀っていた岩

「こちらは元々大きな岩でしたが、大神島に港をつくるときに壊されてしまったんです。すると、工事に関わった人が次々と病気や事故にあうようになってしまった。島のおばあたちに聞くと、実は昔から島の人たちが神様として祀っていた岩だったという。それで、壊した岩のかけらを探してきてここに祀ったんですね。今でも島のおばあたちは毎月お祈りをしています。もう50年近く続けられているんですよ」と下地さん。
来島したことへの感謝を込めて「おじゃまします」と手を合わせると、すっと背筋が伸びて清らかな気持ちになった。

 

神祭行事が行われる山で、360度の絶景を堪能

遠見台へ

まずは、島で最も高い場所である「遠見台(とぅんぱら)」へ向かう。小道を進んでいく下地さんについていくと、わきに看板が。

「人間は見ていなくても神様は見ています。神様に失礼のない行動と心がけをお願いします。島を訪れる人に愛と光と喜びを。」

戒めと祈りの言葉に、島を守る島民の思いが込められている。立ち入り禁止区域に入らない、ゴミを持ち帰る、自然を壊したり持ち帰ったりしない。島のルールを守ることが、暮らしと観光を守ることにつながると改めて感じた。

 

木製の階段を上って頂上を目指す

さらに小道を進むと、木々が生い茂る木製の階段が現れた。思いのほか急で、すぐに息が切れてしまう。「昔は70歳すぎのおばあも、神祭行事のたびにこの山を階段なしで歩いて登っていたんですよ。ほら、ロープがあるでしょう」と下地さんが指さす先を見ると、階段の下、かなり急な斜面に連なるロープが見えた。驚きとともに尊敬の念を持って、頂上を目指す。

 

頂上からは宮古諸島も一望できる

頂上で待っていたのは大神島を360度見渡す絶景!宮古諸島も一望することができ、海と島々の美しい景色に思わず息をのむ。心地よく吹き抜ける風が疲れを癒し、心が満たされていった。

 

自然がつくりだした芸術を鑑賞

奇石と呼ばれる数多くの岩

遠見台を下りたら、次は島の北端へ。ここでは沿岸に点在する、「奇石(のっち)」と呼ばれるキノコのようなかたちの岩を数多く見ることができる。

 

自然が創りあげた芸術的な岩

もともと島が隆起した際に地表から転がり落ちた岩が、波の浸食により少しずつ根元を削られ、長い時間をかけてこのような姿になったのだそう。なかには根元が薄くなり倒れてしまったものや、もうすこしで倒れそうなものも。澄んだ海に浮かぶ、自然がつくりあげた神秘的な芸術作品を、ひとつ一つじっくり鑑賞した。

 

島唯一の食堂で特産品に舌鼓

おぷゆう食堂でランチを

島巡りを楽しみ、おなかがすいたところで、ランチは島で唯一の食事処「おぷゆう食堂」へ。食事を味わいながら休憩できるほか、島のお土産品も買うことができる。併設されている民宿も人気なのだとか。

 

島の名物「カーキダコ丼」

さっそく島の名物「カーキダコ丼」を注文。甘辛く味付けされた、ほどよい弾力のあるタコと火を通してしんなりした玉ねぎの相性が抜群。箸が進み、あっという間に完食してしまった。

 

タコを燻製にしたカーキダコ

カーキダコとは、タコを燻製にしたもので、大神島では昔からつくられてきた特産品。海が荒れて漁ができないときに備え、保存食として蓄えられていたのだそう。

 

薄くスライスして丼に

おぷゆう食堂では、このカーキダコを薄く削ぎ切りにして味付けし、丼として提供している。「ひと切れ食べてみるかい?」と店主さん。切ったばかりのカーキダコを味見させてもらった。香ばしい風味と凝縮された旨味が噛むほどに広がり、ほどよい弾力があって、そのままでも美味しい!

 

昔から続く豊かな自然に心も魅了される

食後は、港周辺を散策。静かで穏やかな島の時間。のどかさに包まれ、心が安らいでいくのがわかる。

海を見ながら、おぷゆう食堂の店主さんが話していたことを思い出した。島では交通やインフラが整っていなかった昔から今にいたるまで人々はほぼ自給自足で暮らしてきており、海はそんな島民の生活に豊かな恵みをもたらしてきたんだそう。自然を大切にしなければと感じつつ、満ち足りた気持ちで島に感謝しながら、美しい星空を眺めようと夜の訪れを待ちわびた。

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