島の魅力を届けたい。島の美しい自然や暮らしを守り伝えていきたい。
ここ宮古諸島には、そんな思いで、ものづくりをしている人たちがたくさんいる。
島を愛する気持ちがこもった、“宮古のいいもの”を巡る旅へ出発!
島の暮らしと自然を守る、池間島産タマヌオイル
ブルーの海に心躍らせながら、池間大橋を渡って池間島へ。お目当ては、島の人たちの手により大切に作られているタマヌオイルだ。
宮古諸島で昔から防風林として植えられてきたテリハボクは、毎年春と秋にたくさんの実を落とす。もともと捨てられていたその種子が、いまではタマヌオイルの原料として地域に仕事を生み人々の暮らしを支え、島の自然環境の保全に役立っているという。プロジェクトを立ち上げて運営する「ヤラブの木」の三輪智子さん・大介さん夫婦に会いに行った。
高齢化が進む池間島では、地域社会や自然環境の保全に切実な問題を抱えている。
「仕事を作り、進学で島を出た子どもたちが希望をもって戻ってこられる島にすること。海岸林を整備し、島の自然を豊かにすること。そういった課題に対する答えを模索していくなかで、テリハボクの種から良質なオイルがとれることを知ったんです。オイルを製造することで島に仕事が生まれるし、植樹を進めることで島の自然環境や海の生態系を守ることができる。そんなアイデアのもと、タマヌオイルの製造を始めました」と智子さん。
島の人たちは、自然落下した種子を集めて一つひとつ殻を割り、虫やカビのついていないきれいなものだけを選別する。それを「ヤラブの木」に持っていくと、重さに応じて対価が支払われる。
「この仕事のいいところは、いつでもどこでも誰にでもできるところ。おじいやおばあが集まっておしゃべりしながら作業して、助け合いの輪が生まれています」と大介さん。そうして集められた種子は、天日と風だけで4か月ほど自然乾燥させたのちに非加熱で搾油される。オイルを実際に手に取ると、澄んだ色と雑味のない香りで肌にやわらかくなじむ。島の人たちの丁寧な手作業による品質の高さこそが、一番の魅力だ。
「池間島が好きなんです。人がすごくあったかいし、海や自然も本当にきれい。この素敵な島を未来まで豊かなまま残していきたいですね」
宮古島をアクティブに楽しむためのホテル
宮古島へ戻り、今日の宿である「HOTEL LOCUS」へチェックイン。ここは、ホテルを拠点に宮古島全体をアクティブに楽しんでほしい、というユニークなコンセプトのもと島の魅力を発信している。シンプルなインテリアに、宮古をモチーフにしたファブリックやアートワークが映える客室は、コンパクトながら居心地がいい。
1Fのアクティビティラウンジは、ゲストと宮古島をつなぐ場。島の食や文化を紹介するライブラリースペースのほか、カウンターにはゲスト自身がおすすめスポットを書き込めるノートも置かれていて、宮古島を楽しむ旅のヒントがいっぱい。
フロント横のショップには、宮古諸島でつくられているこだわりの商品が並ぶ。スタッフが実際に使って気に入ったもの、作り手の顔が見える信頼できるものだけを厳選して取り揃えているという。また、商品と並んでホテルオリジナルのタンブラーも販売。宮古島にはペットボトルの処理施設がないため、ごみを島外へ輸送しなければならない。そこでマイボトルとして持ち運んでもらい、少しでもごみを減らせたらとの思いだという。
連泊の際には、このタンブラーがついてくるSDGsプランが利用できるとのこと。ゆっくり滞在して、タンブラーと一緒に宮古島の魅力をより深く探る旅をしてみたい。
とびきり美味しい有機マンゴーを味わいに来間島へ
翌日は、宮古島の南にある来間島へ。訪れたのは、有機栽培でマンゴーを生産する砂川重信さん・智子さんの農園。来間島の自然を守りたいとの思いから農薬を使わず、20種類近くもの品種を育てている。宮古島産のマンゴーの味と香りの素晴らしさに心を打たれて、砂川さん夫婦がマンゴーを作り始めたのは、もう35年以上も前のこと。ハウスが全滅するほどの被害を何度も乗り越え、有機栽培で安定してマンゴーを生産できるようになるまでに20年ほどかかったというから驚きだ。
「ここのマンゴーは美味しいよ」と重信さんが自ら太鼓判を押すマンゴーを味わいに、智子さんが運営する「農家れすとらん 楽園の果実」へ。注文したのは、農園で育った有機マンゴーを贅沢に使ったマンゴーパフェ。鮮やかに熟したマンゴーをさっそく頬張ると、華やかな香りとコクのある甘みが口いっぱいに広がって、たちまち幸せな気分に!
「収穫の時期には、農園でとれる珍しい品種のマンゴーも店頭販売し、その個性や魅力を幅広くご紹介しているんですよ」と智子さん。夏の訪れが待ち遠しい。
レストランではスイーツのほか、地元でとれる食材を使ったお料理も楽しめる。
「宮古諸島でとれたものをいいかたちで提供して、島の素晴らしさを発信していきたいですね」と智子さん。プレートにものっていた美味しいパウンドケーキをお土産に買い、お店を後にした。
旅の締めくくりは伊良部島の逸品が味わえる名店へ
空を美しく染め海へと沈む夕陽をながめながら、最後は宮古島から伊良部大橋を渡り伊良部島へ。“宮古のいいもの”巡りの締めくくりは「島ごはん 琉宮」で、鮮度と旨味にこだわり厳選された島の逸品を味わうことに。店内には、なかなかお目にかかれない貴重な泡盛古酒がずらりと並ぶ。厨房では店主の加賀屋仁志さんが、伊良部の佐良浜漁港から自ら仕入れてきたばかりの魚をさっそく仕込んでいた。
「佐良浜でとれるカツオやメバチ、そして漁師さんや仲買人さんたちの技術と人柄。ここにはまぶしいものがいっぱいあるんです。漁港がそばにあり、とれたてのものをすぐに提供できる。ここまで鮮度のいいものが出せる場所はなかなかないと思います」と加賀屋さん。
加賀屋さんが自ら作陶したお皿にのせられ、お待ちかねの料理が運ばれてきた。身の締まったカツオやイセエビの刺身は驚くほど旨味が詰まっていて、高知からオーガニックの藁を仕入れてたたきにしたというメバチの藁焼きはモチモチの食感と凝縮された風味がたまらない。そして、カツオの心臓の刺身は滋味深く美味しく、口のなかでとろけるよう。食べるごとに体も心も満たされ元気になっていく。
「魚はすべて自分で目利きをして、何十匹というなかから美味しいものを選び抜いています。漁師さんたちとのつながりもあるし、仲買人さんたちも僕を信頼していいものを出してくれる。美味しいお魚が提供できるのはみなさんのおかげですね」
刺身の美味しさを満喫していると、イセエビの頭と殻がスパゲティに変身して登場した。お店で人気のメニューとあって、出汁をぎゅっと濃縮して余すところなく活かした一皿は、これまた絶品。おなかも心もすっかり満ち足りた。
「お店をつくるときから今にいたるまで、島の人たちには家族のように良くしてもらってきました。そんな島の人たちが作ったものを最大限に美味しく提供したい。そして、みなさんの大切な旅を美味しい思い出で彩りたいと思っています」と加賀屋さんは笑った。あの場所でしか食べられない、島の美味しさが詰まった料理を味わいにまた宮古へ行きたくなる。
翌朝、青い海を眺めながら、ここはいいところだな、としみじみ思った。それはきっと、“宮古のいいもの”たちが、島の魅力を伝え、旅を豊かにしてくれたからに違いない。島を思い真摯にものづくりに取り組む人たちの笑顔を思い出しながら、今回の旅を終えた。