
沖縄本島から気軽にアクセスできる小さな離島、津堅島。
「オジーの残した民宿を盛り上げたい」という想いから、宿で行われる音楽ライブを動画配信サービス「YouTube」や「TikTok」で毎日お昼に生配信を行っており、SNSでも島の魅力を発信し続けている民宿「神谷荘」を訪れました。
音楽文化が息づくキャロットアイランド・津堅島

沖縄本島中部・うるま市の平敷屋港からフェリーで約30分、高速船ならわずか15分で到着する津堅島。
糖度が高く甘みの強い「津堅にんじん」が特産で、“キャロットアイランド”の愛称でも知られています。島内にはにんじん畑が広がり、美しい海とサンゴ礁に囲まれた穏やかな自然が魅力の島です。
また、津堅島は沖縄に三線を広めたとされる「赤犬子※」の生誕地として伝えられており、今もその民謡文化が受け継がれている“音楽の島”です。
※赤犬子…琉球古典音楽の始祖と称される伝説上の人物。沖縄の伝統楽器である三線を生み出し、各地に広めたとされています。

島にレンタカーはなく、目的地までの移動は乗合・貸切タクシー「キャロタク」で。環境にやさしい電動カートで、風を感じながらアトラクションのように移動を楽しめます。島の周囲は約8㎞とコンパクトで起伏も少ないため、徒歩やレンタルサイクルでも十分に観光スポットをまわることができます。
三代にわたり想いを紡ぐ海辺の宿「神谷荘」

津堅港から集落を抜けて約5分。1980年創業の「神谷荘」に到着しました。
45年の歴史を持つ、3代続く老舗の民宿です。
創業者は神谷 幸徳(かみや こうとく)さん。島にまだ定期船がなかった時代、おにぎりや軽食を販売する小さな施設として夫婦ふたりでスタートしたそうです。その後、「有限会社 神谷観光」を立ち上げて定期航路事業を開始し、津堅島と本島をつなぐ交通の礎を作り上げました

民宿の二代目を継いだのは、民謡歌手としても知られる神谷 幸一(かみや こういち)さん。
8人きょうだい全員が民謡歌手という音楽一家で、民宿の食堂内に設けたステージでは民謡ライブを頻繁に開催し、賑わいをみせていたそう。島を訪れる人々に津堅島の文化と音楽の魅力を伝えながら、観光の発展にも力を注いできました。

そして、2020年に祖父・幸一さんから民宿経営を引き継いだ三代目が、現オーナー・神谷 恭平(かみや きょうへい)さん。東京で音響の仕事に携わっていた恭平さんは、高齢化による後継者不足で民宿が存続の危機にあることを知り、「曽祖父と祖父が守り続けてきた大切な場所を絶やすわけにはいかない」と引き継ぐことを決意したそう。
若い感性と行動力で「神谷荘」を新たな形で継承しながら、音楽の力で津堅島の魅力を発信。従業員兼シンガーのHinakoさんと二人三脚で宿を切り盛りしています。

そして「島のかつての賑わいを取り戻したい」という想いから立ち上げたのが、“音楽で島おこし”をテーマに掲げた「ミュージックアイランドプロジェクト」。
音楽と海が常に寄り添うような、心地よく開放的な空間を作りたいと、レストランにあったライブステージを拡張し、DJブースを新たに設けるなど、自らの手で拠点を作り上げました。
コロナ禍に始めた音楽ライブの生配信は、なんと3年半にわたりほぼ毎日行っており、津堅島から世界へ発信し続けています。
遠方のファンからも多くの応援メッセージが寄せられ、ライブ配信で得た収益は、ビーチクリーンなど島の観光地の修繕や島の学校への寄付に役立てられています。

お待ちかねのランチタイム。恭平さんこだわりのステージで海をバックにライブが始まります。
この日は天気も良く、海の色が本当にきれい!抜群のロケーションも相まって、これから始まるライブに期待が膨らみます。

この日は、Hinakoさんと恭平さんによる弾き語りライブでした。おなじみのポップスからオリジナル曲まで、透き通るような歌声とやわらかいギターが心地よく響きます。民謡にとどまらず、弾き語りやバンドなど、多彩なジャンルのアーティストが集い、発信できる場所になっているそうです。
ライブの合間には、島の観光スポットやおすすめの過ごし方を紹介するMCタイムもあり、アットホームな雰囲気に心がほぐれます。生配信中は、全国からリアルタイムで温かいコメントが寄せられ、画面越しにも島の温もりが伝わっているようでした。

心地よいライブを楽しんだあとは、名物「津堅丼」をいただきました。島のもずくや野菜と一緒に炒めたひき肉がたっぷりとのせられ、ピリ辛の味付けが食欲を刺激します。地元の食材を使ったお料理と、生演奏のライブを一緒に楽しめるのも「神谷荘」ならではの魅力です。
ランチは、特製もずくひき肉がのった「津堅そば」や日替わり定食、夜はおつまみになる一品料理が楽しめるので、島の人々や宿泊客で賑わいます。

素敵なランチタイムを過ごしたあとは、今回宿泊するお部屋へ。
和と洋のテイストがほどよく調和した客室は、どこか懐かしくてレトロなかわいい雰囲気。
清掃が行き届いており、女性のひとり旅でも安心して快適に過ごせます。窓から海を望むお部屋もあり、島時間をゆったりと過ごせる癒やしの空間です。
のんびり島さんぽへ

宿の目の前に広がるのは、白い砂浜と抜群の透明度を誇る「トゥマイ浜」。
「海に足をひたすだけでも本当に気持ちがいいですよ」と、宿のスタッフさんが笑顔で教えてくれたので、裸足で砂浜をお散歩。まだあまり知られていない津堅島のビーチは、振り返ると自分だけの足跡が点々と続き、まるでプライベートビーチにいるような気持ちで楽しめました。

ビーチを散策した後は、港近くの「あずま商店」で自転車をレンタル。風情ある集落を走っていると、民家の塀に大量の網を発見!珍しそうに眺めていると、通りがかりの島民が「もずくの養殖で種付け用に使う網だよ」と教えてくれました。島の人々はとてもフレンドリーで、商店のおばちゃんやキャロタクの運転手さんが親切に声をかけてくれます。
地元の人たちとの温かな交流に、心まで癒やされながら、にんじん畑が広がる道をのんびりとサイクリングで楽しみます。

集落から約3分ほどの高台にある「ニンジン展望台」では、島全体を360度見渡すことができます。最上階にはニンジン型のベンチが設置されており、思わずカメラを向けたくなるほどフォトジェニックなスポット。島の景観と爽やかな海風を一度に楽しめます。
宿泊者の特権!癒しのひと時

サイクリングを満喫したあとは、宿のテラスからサンセットを眺めました。目の前にゆっくりと沈む夕日と変わりゆく景色に時間を忘れてしまいそう。
日帰り観光客が多いので、船の最終便が出たあとは静かな時間が訪れ、まるでプライベートビーチのような贅沢なサンセットを独り占めできます。

お楽しみの夕食は、海を間近に感じられるテラス席でBBQ!
ボリューム満点なお肉3種(リブロース、豚ロース、鶏もも肉)に加え、沖縄そばの麺で作る焼きそばなども付いた、大満足のセットをいただきます!(※要予約、2人前から受付可能)


神谷荘オリジナルの下味で仕込んだお肉は、旨味が濃縮されていてやわらかく、格別の美味しさ!焼いたときに広がる香りが食欲をそそり、あっという間に完食してしまいました。
潮風を感じる開放的なロケーションで味わうBBQはまさに特別。
お腹も心も満たされて、幸せな気分のまま1日を終えることができました。

少し早起きした翌朝、ビーチでのんびりお散歩。
波の音に耳を傾け、キラキラと輝く水面を眺めながら、裸足で砂浜を歩く時間はまさに癒やしそのもの。
“何もない”がある島――。
どこへ行ってもモノであふれる現代において、津堅島では、何もないからこそ感じられる静けさとゆとりという、究極のぜいたくを味わえます。

名残惜しさを感じながらチェックアウトを終え、3代に渡る物語が詰まった「神谷荘」を見上げていると、恭平さんが語っていたこれからの展望がふとよみがえりました。
「音楽家が集まるような島を作っていきたいです。祖父たちが繋いできた“音楽の絶えない場所”をこれからも守り、次の世代へと宿を受け継いでいきたい。また、にんじんの時期に遊びに来てくださいね!」
過疎化が課題となっている津堅島。それでも、島にルーツを持つ若い世代が“音楽の力”で島おこしに挑戦を続けています。
島に足を運び、津堅島の音楽と人の温もりに触れてみてはいかがでしょうか。
Information 基本情報
民宿 神谷荘
| 住所 | 沖縄県うるま市勝連津堅1472 |
|---|---|
| TEL | 098-978-3027 |
| 備考 | |
| URL | https://www.kamiyasou.com/ |

