渡嘉敷島で今注目の「エシカル」を取り入れた離島旅に出かけよう【前編】

エシカルとは「倫理的」「道徳的」を意味する言葉。人や社会、地球環境にやさしい消費行動やライフスタイルを行うことで、社会的な課題を解決する手段として今注目されています。沖縄の離島・渡嘉敷島(とかしきじま)では「環境に負荷をかけないツアー=エシカル」と設定し、島の事業者同士でプログラムを作り上げました。島の美しい自然がいつまでも美しくあってほしい。そんな想いが込められたエシカルツアーを体験してきました。(前編)

 

島の美しい海を守るために。次世代へバトンを繋ぐ行動を

国立公園に指定されている慶良間(けらま)諸島。その慶良間諸島の中で一番面積が大きいのが渡嘉敷島です。色鮮やかなサンゴ礁に囲まれ、その海の美しさはケラマブルーとも呼ばれるほど、世界中のダイバーや観光客が訪れる離島です。

しかし、観光客の増加によりビーチから近いサンゴ礁が海水浴客によって踏み荒らされサンゴが消滅したり、海洋プラスティックゴミの問題で慶良間諸島の海に住む生き物たちに被害が出たりなど、慶良間諸島でも環境に配慮した旅行形態の確立が急務となっています。

 

カヤックで行く、地球と自分にやさしい無人島ツアー

そんな渡嘉敷島の海に負荷をかけないために、また現在問題になっている海洋ゴミについて気付きになってほしいと作られたのが「カヤックでわたる無人島ツアー」です。船ではなくカヤックで行くことでCO2の排出を抑えることができるほか、自分自身でカヤックを漕ぐことで島の美しい海をより身近に感じることができます。

島の人気スポット「阿波連ビーチ」から出発。目の前に見える無人島(ハナリ島)までカヤックで移動します。浜でパドルの練習をしたのですが、実際にパドルを漕いでみると操作が上手くいかずにふらふらと進路が定まりません。しかし、2人で声を掛け合いながらカヤックを漕いでいると段々とコツを掴んできました。推進力は漕ぎ始めた時と比べて段違いでスイスイと波を切って進んでいく感覚がとても気持ちがいいです。

途中、カヤックが一隻ようやく通れるくらいの岩のすき間を抜けたり、洞窟を通ったりとスリリングな旅路に。巨大な岩が近づくと思わず「ぶつかる!」と大きな声が出るほどドキドキ。そんなアドベンチャー気分を味わえます。

カヤックの上からでもサンゴ礁や泳ぐ魚が見られるほど透明度が高い海に感動。カヤックには海の中を覗けるアクアスコープもあるので、よりクリアに海中のサンゴ礁や熱帯魚を観察できます。

30分ほどカヤックを漕いで無人島・ハナリ島に到着。上陸後は今回のビーチクリーン「マナティプロジェクト」についてガイドから説明を受けます。マナティプロジェクトとは、漂着するゴミと人を繋ぎ、いつでもどこでもビーチクリーンができるプロジェクトのことで、沖縄本島や離島を中心にコミュニティを広げています。「ゴミ拾い=遊び」と定義し、クリーンアップを気軽に楽しむ活動です。

「楽しく遊ぶように」をコンセプトに私たちもビーチクリーンをスタートさせたのですが、実際に島に漂着したゴミの数々を目の当たりにするとかなりショッキングで少し気分が落ち込んでしまいました。

漁具やペットボトルなどの漂着ゴミをよく見てみると中国語や韓国語の表記が目立ちます。これは日本周辺の主な海流として流れる黒潮や親潮、対馬海流の影響を受けて中国、台湾、韓国などの大陸からゴミが流れやすくなっているためです。逆に日本から出た海洋ゴミはアメリカ大陸へと流れています。ニュースで海洋ゴミの問題は知っていましたが、実際に自分の目で見ることで、世界的かつ深刻な問題だと強く実感しました。

気を取り直して、マナティプロジェクトのコンセプトである「楽しく」を。実はこのあとに海洋プラスティックゴミを活用したサシェ(プレート)作りの体験もあるとのこと。そこで使えそうなプラスティックゴミを瓶に集めます。海洋ゴミが雑貨になるなんて。そこからは、宝探しゲームのように、色鮮やかなゴミを集めていきます。

ビーチクリーンのあとは無人島を散策。小高い丘があり、その頂上から見る景色は絶景です。絶景を眺めながらも、頭の中はビーチクリーンのことでいっぱいに。「ビーチにゴミを捨てない」は当たり前ですが、ゴミを減らすために不要なビニール袋を持ち歩かない、マナティプロジェクトを知人や友人に周知したい、サンゴや海に優しい日焼け止めクリームを塗ろうなど、自分にできる精いっぱいのことをしたいなと思いました。

マナティプロジェクトでは、拾ったゴミを持ち帰り、行政に申請をしてゴミが処理されるまでが活動の範囲です。そのため拾ったゴミはカヤックに積んで、渡嘉敷島まで運び島で処理していきます。

 

海洋プラと島の植物を使った香り漂う「循環サシェ作り」

さっそくハナリ島から持ち帰ってきた海洋プラスティックゴミを使用したサシェ作りを体験します。

プレート型の上に海洋プラスティックゴミを好きなように並べて、その上から温めたロウを流し込みます。ロウは石油由来ではなく植物由来の大豆(ソイ)で出来た大豆油を使用しているので、空気を汚すことなく体や環境にやさしい素材となっています。

完成したサシェがこちら。渡嘉敷島の美しい海と、それを守っていく決意を表した作品に仕上げました。我ながら上出来。これを見るたびに、海洋ゴミの問題を思い出し、考えるきっかけとなることでしょう。

サシェだけでなく、オリジナルのボタニカルソイキャンドルの制作も行えます。ドライフラワーをロウソクのまわりに詰め込み、色合いを調整していきます。

使用するのは島内に咲くブーゲンビリアやハイビスカス、月桃などをドライフラワーにしたもの。ドライフラワーを詰め込む順番や色合いなど、完成したときの断面を想像しながら作業を進めます。私は華やかな色合いが好きなので、ブーゲンビリアやハイビスカスを多めに詰め込み、色合いのアクセントに途中で月桃を差し込みました。一方で落ち着きのあるシンプルさを求める人は、あまり素材を詰め込まないそう。好みがそれぞれで分かれるのでとても面白いです。

ドライフラワーを詰め込んだら、次はロウソクの香りを選んでいきます。ジャスミンやピオニーなど数種類ある中から選ぶことができます。ジャスミンは香りの良さだけでなく、ストレス解消や気分を落ち着かせる効果があるとされています。自宅に持って帰り、どのように使うかを想像して香りを選ぶのもいいですね。

ロウソクが固まるまで3時間ほどかかるため、午前中に制作したらその日の午後に、午後に制作すると次の日に完成品が手渡されます。完成品を見るまでは表面の色合いがわからないので待っている間はドキドキ。完成品を見た瞬間、想像していた以上にキャンドルの断面が色鮮やかだったので思わず「可愛い!」と叫んでしまいました。見た目だけでなくアロマオイルの華やかな香りにも癒されます。島の環境にも負荷をかけない、自分だけのお土産が完成して心がときめきます。

>>【後編へ続く】島の野草やスパイスを使った体験

 

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