エシカルとは「倫理的」「道徳的」を意味する言葉。人や社会、地球環境にやさしい消費行動やライフスタイルを行うことで、社会的な課題を解決する手段として今注目されています。沖縄の離島・渡嘉敷島（とかしきじま）では「環境に負荷をかけないツアー＝エシカル」と設定し、島の事業者同士でプログラムを作り上げました。島の美しい自然がいつまでも美しくあってほしい。そんな想いが込められたエシカルツアーを体験してきました。（後編）

＞＞【前編はこちら】ビーチクリーンで海洋ゴミ問題について考える

島の野草を使った料理で健康に生きる

環境に負担のかかる農薬や化学肥料を使った野菜や食材をなるべく減らしていくことも、エシカルな行動のひとつといえます。エシカルツアーでは、島に自生している野草を使って健康的な料理を作る体験も行っています。

まずは野草を集めていくことから始めます。島で採れるのは、桑の葉やモンパの木の葉っぱ、ヨモギ、センダングサ、ニガナなど。やわらかい若い葉を摘んでいきます。

桑の葉などはクセがなくそのまま食べられます。一方でセンダングサやニガナはとても苦くて食べられそうにもありません。そういった苦い野草にはタンパク質を加えると苦みを抑えることができるそう。

たくさんの野草を集めたら、島の民家で調理をしていきます。ハイビスカスやシークヮーサー、レモングラス、バタフライピーはデトックスウォーターに使用します。センダングサは島で獲れ自ら加工したツナ(マグロ)と一緒にミキサーに入れてジェノベーゼに。ニガナには豆腐を加えて白和えにしておいしくいただきます。基本的に野草に一品を加えて一緒に和えるだけの作業なので、とても簡単。料理初心者の私でも自宅で簡単にできそうです。

完成した料理がこちら。左からセンダングサを使ったジェノベーゼ、野草のサラダ、モンパの葉などをカラッと揚げた野草天ぷら、ハイビスカスやセンダングサの花を細かくして味噌や塩と混ぜた野草味噌と野草塩、ハイビスカスの酢の物、ニガナの白和えなどなど。

初めての野草料理をいただきます。どれもおいしいのですが、個人的に感動したのはセンダングサを使ったジェノベーゼとモンパの葉っぱを揚げた天ぷらです。ジェノベーゼは見事に苦みがなくなり、ツナとの相性は抜群。天ぷらはサクサクとした食感に葉っぱ自体が驚くほどジューシー。これだけで白いご飯が進みます。センダングサは解熱や利尿作用が期待できるといいます。モンパの葉っぱは昔から薬草として使われてきたそう。体にうれしい素材で自分にも環境にもやさしい食生活が目指せます。

身近にある野草で絶品料理が味わえるのはとても驚きで新しい発見でした。野草を摘んで食べる際は、知識のある方と一緒に楽しんでください。

野草を摘むときに使用したカゴのように、クバの葉を使ったクラフト体験も行っています。作ったカゴはお菓子入れにしたり、ドライフラワーと一緒に飾り付けしてインテリアとして楽しんだり。沖縄で昔から使われている民具作りをぜひ体験してみて。

島の香草を使って自分だけのクラフトコーラ作り

渡嘉敷島には野草だけでなく香草やスパイスも豊富。そんな島で採れた素材を使って手作りのコーラ（クラフトコーラ）を体験できるツアーを最後にご紹介。数々のご当地コーラが登場したり、各メーカーでもクラフトコーラを販売したりと、日本国内でブームとなっています。

各種スパイスの特徴や試飲を通して自分の好みなどを把握した上で、オーダーシートにスパイスの分量や使う野草を記載してレシピを作っていきます。例えば喉にガツンとくる刺激の強いクラフトコーラを好む人はブラックペッパーや島唐辛子を多めに配合したり、逆に甘さを求める人はバニラやジュニパーベリーをたくさん入れて調合したり。世界にひとつだけのクラフトコーラを作っていきます。

調合したスパイスをすり鉢とすりこぎで丁寧に砕いていきます。スパイスが硬く、すりつぶすのにかなりの力が必要です。力を入れすぎるとスパイスが器から飛び出してしまうので、力加減にもコツがいる作業となります。ここが一番難しい。

スパイスを細かくしたら鍋に水とそして砂糖を入れて煮詰めていきます。徐々にスパイスのいい香りが漂いますが、見た目はなにかの薬草を作っているかのよう。これで本当においしいクラフトコーラが出来上がるのか心配になってきます。

煮詰めた液体をこし器を使って取り出しオリジナルコーラの原液に炭酸を加えて完成。バタフライピーを入れたやわらかなブルーの色合いが特徴のクラフトコーラが誕生しました。さて、お味はいかに。

一口飲んでみると自分たちで作ったクラフトコーラがおいしすぎて、思わず笑顔がはじけます。作っているときには想像もしていませんでしたが、一度このおいしさを知ってしまうと「今度はあの味を作ってみたい！」とクラフトコーラ熱が高まってきます。自分で作ったクラフトコーラは瓶に入れて持ち帰れるため、自分だけのお土産がまた増えました。

エシカルな体験を経て。美しい自然を守れるのは今を生きる私たちだけ

渡嘉敷島のエシカルな体験を終えて、阿波連ビーチで美しい夕日を眺めながら「この島のためにできることは何だろう？」と考えます。いつまでも渡嘉敷島が私にとっての癒しの場所であるために、私もできる行動をしていきたい。小さな一歩が大きな事を変えてくれることを信じて。

エシカルな体験を通して様々な気付きがありました。ぜひ皆さんも渡嘉敷島のエシカルツアーを体験して、自然環境のことを少し考えてみませんか？