沖縄本島の西の海上に浮かぶ久米島は、琉球王朝時代には数ある島々の中で最も美しい「球美(くみ)の島」と称えられた島。水が豊富で、多様な動植物が多く、クメジマボタルやキクザトサワヘビといった、この島だけにいる固有種も数多く生息している。島の豊かな自然と希少な動植物に出会いたくて、久米島へと向かった。
島に着いたら、ウミガメたちに会いに行こう
「久米島ウミガメ館」は、絶滅の危機にあるウミガメの保護を目的とした施設。メインの大水槽ではアカウミガメ、アオウミガメ、タイマイなど、ウミガメたちがゆったり気持ちよさそうに泳いでいて、時間を忘れていつまでも見入ってしまう。
パネルや映像展示では、ウミガメの生態を紹介。開発による埋め立てや護岸工事などの影響で産卵できる砂浜の減少や、漂着ゴミなどによって命の危機にさらされていると知り、「海を大切にしなくちゃ」と強く感じた。ウミガメ館や島の人たちは、動物たちが生きる自然を守ろうと頑張っている。自然を守るために、普段の暮らしの中でできることがないかなと考えながらパネルを見つめた。
島素材のジェラートはやさしく奥深い味わい
ウミガメ館の次は、お待ちかねのおやつタイム。島の果実や特産品を使った手づくりジェラートが人気の「久米島Verde(ヴェルデ)」へ。キッチンカーで移動営業しているので、S N Sで本日の販売場所を確認してから向かう。シークヮサーや月桃、島のスパイス、季節の食材を使ったジェラートは、ここでしか味わえないと聞いてワクワク。
「久米島の旬の素材はみんなおいしいんです。いろいろ組み合わせることで新鮮な発見がありますよ」と店主の若勇昌彦さん。イタリア在住中に食べたジェラートを若勇さんなりに再現したのだそう。白糖を使わず、季節の味にこだわっていて、島の人たちにも好評だ。奥さんの麻衣さんが笑顔で渡してくれた「キャラメル島バナナ」のジェラートは、驚くほど甘くて舌にとろける。明日も食べたくなっちゃった。
シュノーケリングで久米島の海を観察
眺めているだけでも癒やされるけど、ちょっと勇気を出してシュノーケリングに挑戦。ガイドしてくれるのは、久米島シュノーケル専門店悠久(ゆく)の中島悠希さん。「シュノーケリングは初めてなんです」と告げると、道具の使い方からしっかりレクチャーしてくれた。
「久米島は島の形がひし形で、風が当たらない側の海は波が穏やかになります。一年中いろいろな魚の観察ができますよ」と中島さん。ウミガメやマンタが見られることもあるんだとか。初めて泳ぐ久米島の海の中には、きれいなサンゴやカラフルな熱帯魚たち。まるで天国みたいな景色が広がっていた。
ナイトウォークで夜の森をお散歩
ちょっと早めの夕飯を済ませたら、予約していた「久米島ホタル館」へ。クメジマホタルの保護・観察を目的に作られた施設だけど、ホタルだけでなく、ホタルを取り巻く生き物たちについても学べる。1日限定10名の「ミステリーナイトウォッチング」はホタル館周辺の森や川をライトの明かりだけで探検する予約限定のツアー。ホタルや夜の生き物たちを観察できるまたとないチャンスだ。
まずはホタル館の館長で久米島の自然に詳しい佐藤文保さん・直美さん夫妻に、久米島の自然についてレクチャーを受ける。動物の生態系や島の歴史など、どんどん広がる話に夢中になって聞き入った。
いよいよ外に行くと、真っ暗! 夜ってこんなに暗いの? おっかなびっくり歩いていると、佐藤さんが「あそこにオオウナギがいますね」とライトで川を照らす。大きな体でゆったり動くウナギのそばには何やら目が光るエビらしきものも見える。「あれはテナガエビ。目が光っているのは夜行性の証拠です」と直美さん。へえ!勉強になる。
いろいろな生き物たちを発見しながら夜の散歩は進む。ふと気づくと、虫の鳴き声や花の香りに囲まれていた。直美さんが「真っ暗だと見えない分、嗅覚や聴覚が鋭くなります。ナイトウォークは生き物の夜の姿を観察してもらうと同時に、五感で自然を体感してもらって、昼と夜の違いを楽しんでもらうのが目的なんですよ」と教えてくれた。
散歩の締めくくりは、星空観察。最後に広場に集まってライトを消すと、頭の上には満天の星!「春も夏も秋も冬も、違う生き物が見られますよ。またぜひいらっしゃい」と文保さんが笑顔で話してくれた。
久米島をめぐりながら感じたのは、環境を壊さず、動植物を大切にしながら、次の世代にも豊かな自然を受け継ぎたいということ。島で暮らす人たちは、自然や動植物を未来に残すためにそれぞれができることを続けている。一人ひとりがほんの少しだけ環境問題について考えて、できることから実行したら、きっとより良い未来につながるはずだと心から思った。