世界屈指の透明度を誇る青い海。豊かな緑に覆われた山々。そしてそこに息づく多様な生きものたち。自然あふれる慶良間諸島で、美しい景色に触れて心を満たす旅へ出かけよう。
沖縄本島・那覇からわずか1時間ほどで行ける別世界へ!
阿嘉島で「ケラマブルー」にひと目惚れ
沖縄本島・那覇の泊港から船に乗り、まずは阿嘉島を目指す。高速船で50分、フェリーで90分。那覇から西へおよそ40キロの距離にある慶良間諸島は、気軽に行けるところも魅力のひとつだ。快適な船内でくつろぎながら海を眺め、これから起こる旅の出来事に期待が膨らむ。
阿嘉港に到着し、レンタサイクルで島巡りへ。さっそく向かったのはニシバマビーチ。自転車をとめて、小走りで真っ白な砂浜に出ると思わず「わぁ!」と声が出た。
なんてきれいなんだろう!透き通る鮮やかなブルーのグラデーションに、一瞬にして心を奪われた。静かなビーチに澄んだ波が寄せては返し、波音が心地よく響く。ビーチ入り口にあるテラスに腰かけ、感動的な海の美しさをしばらく堪能した。
ケラマジカに会えた!
再び自転車に乗り島を散策していると、慶良間諸島固有のシカであるケラマジカに遭遇!カメラを向けると、愛らしい目でじっとこちらを見つめてきた。まるでポーズをとっているかのようなその姿に胸がときめく。
島の人に聞いてみると、ケラマジカはいまでは島のあちこちで見られるという。集落近くの前浜(メーヌハマ)では、ケラマジカの親子を発見。おしりの白いハート模様が仲良く並ぶ様子に心が和んだ。
サンゴについて学びながらひと休み
サイクリングに疲れたら、阿嘉港正面にある「さんごゆんたく館」でひと休み。その名のとおり、サンゴにまつわる展示をしているほか、観光案内所として島の情報を提供したり、荷物の預かりなども行っている施設だ。カウンターでコーヒーやアイスクリームを注文して、外のベンチで海を見ながらのんびり休憩するのもいい。
阿嘉島で長年サンゴの研究をしてきたという館長の谷口洋基さん。
「サンゴは、海の小さな生きものにとって大切な生活の場。そしてそれを食べに大きな魚もやってくる。サンゴがなくなってしまうと、生きものたちがみんな生息できなくなってしまうんです」
海の生態系の基盤ともいえるサンゴ。島ではその保全のために、サンゴの上に乗らない・サンゴを触らない・魚に餌付けしないといった基本的なルールを描いたポスターを貼り、海水浴やシュノーケリングを楽しむ人たちに伝えているそうだ。
「サンゴについて知ることが、保全のための第一歩」と谷口さん。「気軽に立ち寄ってゆっくりしていただきながら、楽しく学んでいただけるとうれしいですね」。モニターに映し出される美しい映像を見ながら船を待つ。きれいな夕焼け空の下、村内航路で座間味島へ向かった。
無人島でのんびりリラックス
翌朝は早起きして、座間味島でエコツアーのガイドを務める「アイランドパワー」の大城晃さんのもとへ。嘉比島へ無人島渡しをするというので同行させてもらうことに。
座間味島で生まれ育った大城さんは、「遊びから知恵がついたり、たくましくなったり。自然と対面するとそういった成長があるんです。座間味島の魅力あふれる自然に触れ、お客さまが喜びや感動を通して豊かな心を取り戻し、笑顔になっていくところを見るのが好きですね」。そんな大城さんのお話を楽しく聞いていると、5分ほどで嘉比島へ到着した。
下船して、嘉比島の広い砂浜へ降り立つ。やわらかな砂の上を裸足で歩き、そのまま海へ。コバルトブルーのグラデーション、きらめく水面。透明でやわらかな波が足に心地いい。美しい海はただながめているだけでも飽きることがなく、心がゆるやかにほどけていくのがわかる。無人島ならではの、静かでのどかな時間を贅沢に味わっていると、あっという間に1時間が過ぎた。
ウミガメと一緒にシュノーケリング
再び迎えにきてくれた船に乗り、ウミガメを見に阿真ビーチに行きたい、と大城さんに伝えると「この時間は干潮だから、ウミガメはそこには来ないんだよ」と言う。小さい頃から島で遊んで培った豊富な知識と経験が頼もしい。
代わりに船を少し走らせ、ウルンノサチと呼ばれるポイントへ。レンタルさせてもらったシュノーケルグッズを身に着けダイブすると、色とりどりのサンゴや魚が生息する真っ青な海のなか、悠々と泳ぐ若いウミガメの姿が! 邪魔しないように気をつけながら、夢中で一緒に泳ぐ。座間味島で一番の思い出だ。
とれたて新鮮!お昼ごはんは漁協の海鮮漬け丼を
たくさん遊んでおなかがすいたところで、お昼ごはんを調達しに座間味村漁協直売所へ。お目当ては、水揚げされたばかりの海鮮を使った丼だ。漬けにしたカジキとセーイカの二色丼は、新鮮で美味しく、ごはんの上にたっぷりのっていて、そのコスパの高さに驚く!
直売所を運営する糸嶺直也さんは「水揚げされたばかりの新鮮な魚が食べられるのがここの魅力。鮮度をしっかり保持したものを使い、お客さんに提供しています」と話す。水揚げされた魚に応じてメニューが増えることもあるそうだ。
丼のほか、店内には魚やセーイカを使った天ぷらやかき揚げなどが並ぶ。
「マグロやカジキをさばくときに出た中落ちでフレークを作り、おにぎりに入れたものも人気です。おにぎりは朝8時半から販売していますので、島の朝ごはんとしてぜひ楽しんでいただきたいですね」と糸嶺さん。
翌朝さっそく買いに行き、フレークの風味が活きたボリュームたっぷりのおにぎりでおなかを満たして渡嘉敷島へ向かった。
E-バイクで自然をまるごと楽しむツアーへ
渡嘉敷島では、電動アシストのついたE-バイクで島を巡るという、エコツアーの新しいプログラムに参加。「渡嘉敷島は山が高く緑が豊富。生きものの種類も多い。それほど大きくない島なので、山の景色の向こうにいつも海の色が楽しめるのも贅沢ですよね」と話すのは、渡嘉敷ネイチャーガイド協議会の池松来さん。
まずは渡嘉敷島の西側にある阿波連集落の散策へ。池松さんの企画するツアーでは島の自然を楽しむことに加え、地域を知る集落散策や、環境を守るビーチクリーンなどのアクティビティを取り入れているという。「豊かな自然に触れ、島を身近に感じてもらうことで、島の、そして地球全体の環境を守る意識が生まれたらいいなと思います」と話す。
E-バイクに乗って山の上を目指す。生い茂る木々の間を抜け、澄んだ空気を胸いっぱいに吸いながらE-バイクでスイスイ進んでいくのは本当に気持ちがよく楽しい。
車では通り過ぎてしまう自然を体で感じることができ、ガソリンを使わず島巡りが楽しめるのも、この自転車の魅力のひとつといえそうだ。
山道を登り、自転車をとめ長い階段を上がって、ひときわ高い場所にある照山展望台へ。こうして見渡すと、渡嘉敷島の緑の豊富さにあらためて驚く。この日は曇りで、しっとりとした空気が山を包み、木々が生き生きとして見えた。慶良間諸島には海の美しさだけではなく、山の豊かな楽しみもある。新たな発見を胸に、次はもっとじっくりその魅力を楽しもうと誓って帰路につく。
“島育ち”のフレッシュな果実をお土産に
帰りの高速船を待ちながら、港の待合所にある「島育ち」のお店をのぞいた。ヤマモモやグアバ、琉球ばらいちご、パパイヤなど島の果実を使った、きれいな色のジャムやゼリーが並ぶ。これらはすべて、お店の金城容子さんが手作りしたものだ。
「使っている果実はすべて、島で育ち、島でとれたものだけ。香料や着色料、保存料などを使わず、なるべく自然のままの風味を楽しんでいただけるように作っています」
桑の実は一粒ずつ手で軸をとり、シークヮーサーやタンカンもすべて手搾りするなど、雑味や苦味が入らないよう丁寧に作っているという。手間と愛情をかけて作られたジャムやゼリーは、渡嘉敷港の待合所にあるこのお店でしか買えないお土産として、多くのリピーターに愛されている。味わってみると、ほどよい甘さとフレッシュな風味が口に広がり、なんだか元気が湧いてくる。渡嘉敷島を訪れる楽しみがもうひとつ増えた。
美しい海や山、そしてその恵みに体も心も満たされた慶良間諸島の旅。この豊かな自然を未来まで残していくために、自分にできることは何だろう。そんなことを考えながら那覇へと向かう船に乗り込んだ。