島の固有種「大東月桃」で編み出す珠玉の工芸品

沖縄で馴染みの深い月桃(げっとう)は、旧暦行事で振舞われる「ムーチー」を作る際に使われるなど、地元では馴染みの深い植物です。沖縄本島から約340キロも離れた大東諸島には、固有種の月桃である大東月桃(一般名:大輪月桃、ソウカ)があります。通常の月桃よりも大きく成長するのが特徴です。そんな大東月桃を用いた工芸品の購入やワークショップ体験ができる場所が南大東島にはいくつかありますが、今回はその第一人者である作家の新城幸子(しんじょう さちこ)さんの工房を訪ねました。

 

20年以上、夫婦二人三脚で島の工芸品を編み出す

幸子さんが大東月桃の工芸品を作り出したのは20年以上も前。那覇から南大東島の新城鎌佑(しんじょう けんすけ)さんのもとに嫁いだのがきっかけです。「当時は何もすることがなかったから」と笑いながら話します。鎌佑さんが大東月桃を収穫し、幸子さんが工芸品を編み出す。夫婦二人三脚で作り上げています。

幸子さんが大東月桃の工芸品を作るようになったのは、鎌佑さんに進められその面白さに没頭。試行錯誤を繰り返しながら、バスケットやバッグ、ポーチなどの小物類を中心に工芸品を生み出してきました。島で初めて大東月桃の工芸品を作り出し、2008年には大東月桃を使用した工芸品の「実用新案登録」も行っています。自分自身の作品を購入した人の情報が詰まった帳簿は宝物だそうで「購入した人たちの驚きや喜びを思い出す」と回想します。

元々は漁師だった鎌佑さん。現在は大東月桃の収穫のほか、農業も行っています。「私が子どもの頃は自然と共存することが当たり前だった。大東月桃もその一部。観天望気って言葉は最近あまり聞かないでしょう。今の時代は天気を把握するのにテレビやスマートフォンがあれば事足りるんだから」

 

使用するのは大東月桃のみ

材料として用いるのは大東月桃の茎の部分。月桃の茎は大きいもので3メートルに対し、大東月桃は大きいもので5、6メートルにも成長するといいます。

この茎の部分を3週間ほど乾燥させて、ミルフィーユのように重なっている繊維の一枚一枚を丁寧に手作業で割いていき、その繊維を編み込むことで一輪挿しやバッグなどの工芸品を生み出しています。

新城さんの工芸品はすべて手作業かつ用いるのは大東月桃のみ。接着剤などは一切使用しません。それでいて商品の手直しは20年間で2、3回あった程度だといいます。丈夫さを持ちながら柔軟性がある素材で編み込みには最適。長く丈夫に使用できる理由には、そういった大東月桃が持つ性質が大いに関係しているのです。

竹と同じ頑丈さを持ちながら柔らかい。そのため、かぎ編みのような細かい編み方にも対応でき、工芸品の幅が広がります。

大東月桃で作られた「一輪挿し」や「バッグ」などは有名百貨店などでも販売され、そのデザイン性や機能性から大きな反響があったといいます。現在は新城さんの工房や南大東島空港で作品を購入することができます。

 

大東月桃を使用したクラフト体験も可能

工房では一輪挿しのクラフト体験も行っています。乾燥させた大東月桃を交差させて編み込みながら作成していきます。一輪挿しに使うのはペットボトルで、そのペットボトルの底になる部分がとても重要。この縦軸がしっかり作れないと、次の工程に移ることができません。幸子さん曰く「クラフト体験で一番皆さんが苦戦するところ」といいます。

底を完成させてペットボトルを置き、底から伸びる縦軸とペットボトルを針金で固定したら、あとは横軸となる大東月桃を底から順番に差し込んで編み込むだけ。大東月桃を均等の長さにハサミでカットして隣り合う縦軸のすき間を埋めていきます。埋めていく際は縦軸の裏と表を交互に通して編み込んでいきます。すき間なく編み込むことで、接着剤などの固定材を使わず丈夫な一輪挿しが作成できるそう。

交互に大東月桃を入れていく作業やカットしたときに長さが足りなかったりなど、時間がかかりますが、その分完成したときの充実感や達成感はひとしおです。体験時間は2時間ほどですが、時間内に完成できず途中になったとしても、持ち手を付けて「ドリンクホルダー」としても活用できるので安心して体験が楽しめます。

大東島にしか自生していない大東月桃を用いた一輪挿しはお土産にも最適。ぜひ一度思い出や記念になる体験をしてみてください。原材料が少ない時期は体験ができない時もあるので、大東月桃のクラフト体験を希望の際は南大東島の観光協会まで連絡を。

 

 

Information 基本情報

南大東村観光協会

住所 〒901-3805 沖縄県島尻郡南大東村字在所 (南大東村立ふるさと文化センター内 )
TEL 09802-2-2815
備考 mailbox@borodino.okinawa.jp
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