宮古島の織物をもっと身近に。新しい「価値創造」への挑戦

沖縄離島観光において屈指の人気を誇る宮古島。「砂山ビーチ」や「東平安名崎」など数多くの観光スポットが存在し、その雄大な自然を堪能するために訪れる方も多いと思いますが、島独自の伝統や文化に触れることでより深く宮古島の魅力を感じることができます。

今回は伝統を紡ぐひとりの作家の想いを通じて、「宮古島の織物」が持つ魅力について紹介します。

 

600余年の伝統を誇る宮古島の工芸品「宮古上布」

宮古島の美しい織物「宮古上布(みやこじょうふ)」を知っていますか。宮古上布は最高級の麻織物として越後上布、近江上布と並ぶ日本の三大上布に数えられ、1978年には国の重要無形文化財に指定されています。

現在、担い手の高齢化で宮古上布の原料である手績み苧麻糸(てうみちょまいと)の生産量を十分に確保できないという大きな課題がある中、宮古織物事業協同組合では行政と連携しながら手積み苧麻糸の生産に限らず分業体制で生産する宮古上布の各工程における後継者育成など様々な取り組みを行っています。

そんななか、宮古上布の織り技術そのものを活かして、機械紡績の苧麻ラミーを使った「宮古麻織」や、ラミーと綿の糸を使った「宮古織」の価値創出に挑戦している、作家・中島三枝子(なかじま みえこ)さんを訪ねました。

 

宮古島の織物の「未来」を担う存在になるまで

栃木県出身の中島さんが宮古上布と出会ったきっかけは、23歳のときに友人と初めて沖縄旅行に来たとき。宮古島織物事業協同組合を訪れ、機織りを行う職人たちを目の当たりにし直観的に「とても素敵だな」と感じたそう。もともと地元の伝統工芸「益子焼」も好きで、手作りで何かを生み出す職人に興味を引かれ「いつか織物のお仕事をしてみたい」と思い立ちました。

その想いが実り、2001年29歳で個人工房に弟子入りしたものの、品質が担保された織物を期日までに問屋に収めるという、作家の使命や伝統工芸の重さを痛感し数カ月で工房を去ることに。思い描いていた「理想」と実際に見た「現実」を垣間見ます。

35歳で独立後しばらく宮古上布を制作していましたが、原料の手績み苧麻糸が入手困難なため一時織から離れます。その後45歳で織に復帰し、産地織物の宮古麻織と宮古織を見直し模索を始めました。

 

「宮古麻織」「宮古織」が持つ可能性とは

中島さんの作品を見てみると、その鮮やかな「色合い」と美しい「透け感」が目を引きます。そこには自然布の宮古上布とは違う宮古麻織、宮古織の魅力を感じます。草木染めをしてカラフルに織り上げるためコーディネートしやすいことや、盛夏の着物として注目したい点があります。

「宮古島の織物は宮古上布、宮古苧麻織、宮古麻織、宮古織がありますが、宮古麻織や宮古織は自宅で手洗いできるのが最大のメリットだと思います。着物の手入れ方法をご自身で学び実践される方も多いです。近年は猛暑が続き、夏の着物を身に着ける期間が長いように感じています。麻素材は湿度が高いと布が柔らかくなりますので、ぜひ体感してほしいです」

新しいニーズに対する価値を生み出し、そこにフォーカスしてブランド化していく。そこには、消費者の「リアルな声」が必要不可欠。最近は展示会や催事場から声をかけてもらう機会が増えてきたとのこと。中島さんご自身が展示会に赴き、普段から着物を愛用している方々と直接交流を図ります。

「お客様へは宮古麻織の帯揚げストールや宮古織ストールで風合いを提案します。お客様のご意見を直接伺いながら、着物や帯を着用してもらえることが喜びや制作意欲にも繋がります」

今後の展開について中島さんに聞いてみると「宮古麻織の着尺のほかに、宮古麻織帯の制作規格が新しくなりました。これからはお客様のニーズに合わせた角帯・半幅帯・八寸帯・九寸帯制作も重要になると考えます。その他、苧麻ラミーの特徴を活かした絣のデザインや、草木染めの帯作りにも挑戦していきたいです」とさっそく新しいニーズに向けて制作している旨を教えてくれました。中島さんの今後の活動から目が離せません。

 

宮古島の織物が購入できる場所は?

宮古上布や宮古麻織、宮古織の魅力が知れたところで、私もひとつ欲しくなってしまいました。そこで、宮古島の織物が購入できるスポットを紹介します。

まずは、宮古島市上野にある「宮古島市伝統工芸品センター」です。宮古上布や宮古麻織・宮古織の加工製品を購入できるほか、宮古上布の歴史や制作の工程、制作時に使用される素材や道具などを展示しています。織手養成室が併設されているため、実際の制作の様子も見学できます。勿論、中島さんのストールも置いてありますので、宮古島の織物について学びながら実際に手に取ることが可能です。

中島さんのストールは「琉球COLLECTION叶(かな)」でも購入することができます。そのほか、こだわりを感じるお洒落な店内ではやちむんや琉球ガラスなどセレクトされた伝統工芸品がずらりと並んでおり、その洗練された作品たちを見ているだけでも楽しい気持ちになります。市街地からのアクセスも良いのでぜひ宮古島でのお土産探しに。

 

 

 

Information 基本情報

宮古島市伝統工芸品センター

住所 沖縄県宮古島市上野字野原1190-188
TEL 0980-74-7480
備考 営業時間:09:00~16:30
URL https://miyako-kougei.com/

琉球COLLECTION叶

住所 沖縄県宮古島市平良字西里985-6
TEL 0980-75-3818
備考 営業時間:11:00~18:00 水曜定休日
URL https://kana-miyako.net
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