『粟国島の塩』のルーツを求めて 沖縄海塩研究所に潜入!

那覇市の北西約60km、東シナ海にぽつりと浮かぶ孤島・粟国島。 面積7.64平方キロメートル、周囲12.8km、石灰岩に覆われた半円形の小さな離島は、1999年公開の映画『ナビィの恋』の舞台となり、一躍有名になりました。

数万年前の火山堆積物によるダイナミックな景観、古の鍾乳洞に美麗な海岸線、フクギ並木と赤瓦古民家が残る集落など、オンリーワンの魅力に溢れます。

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独特な風土や地形を活かした特産物も様々で、それらを紐解けば、島の歴史や社会が見えてきます。古くは粟、現在はサトウキビやソテツが特産品として有名。中でも黒糖は県内トップクラスの糖度に定評があります。そして何と言っても『粟国の塩』と言えば、全国的に知られるプロダクト。島北部の沖縄海塩研究所にて製造されており、見学可能とのこと。島の魅力をより深く見知るために、いざ潜入です!

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 粟国島で塩を作るアドバンテージ

島の最北部、静かな海岸沿いに、研究所(という名の工場)はひっそりと佇んでいます。遠目でも分かる、一見異様な風貌のコンクリート構造物… その正体は、後に分かります。

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“いのちは海から”という、意味深な看板が掲げられた敷地内を案内していただいたのは、研究所長の小渡 幸信(おど こうしん)さん(77)。1979年より約40年、学者とともに塩の研究に携わり、粟国島に当研究所を設立したという、まさに筋金入り…海塩の第一人者です。

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元は読谷村が本拠地でしたが、沖縄本島の開発が進んだため、移転を決意。近場に工場排出が一切無いことによる澄んだ海水、山や建物など遮る物のない太陽光と潮風…という難しい条件を求めて、沖縄全域をくまなく歩き回り、とうとう見つけたのが、この粟国島北岸でした。島では農薬がほとんど使われていなかったという嬉しい要素も加わり、1994年、この地に研究所を設立し、現在に至ります。

やはり圧巻は、あのコンクリート構造物。その正体は、オリジナルの立体式塩田タワーです。

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穴空きブロックを約10m積み上げた建屋内に15,000本もの孟宗竹(モウソウダケ)が吊るされています。枝数も豊富なこの竹に、ポンプで隣接する海岸から海水を汲み上げ、流し、一日20回循環させ、これを一週間以上続けます。竹の表面を滴り落ち、太陽熱と壁の穴から吹き込む風に水分を飛ばされた海水は、最終的に、塩分濃度約6〜7倍(塩分20%前後)に凝縮させた、かん水(塩分濃度の高い塩水)となります。 遮る物のない地形と汚れの無い海水…。粟国島北岸というアドバンテージが、まさにここで活かされている訳です。

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20時間から長くて60日もかけてようやくパッケージ

出来上がったかん水は、漉された後、2通りの工程に回されます。

そのほとんどは釜炊き塩として仕上げられます。廃材の薪を燃やした平釜で煮詰め、丁寧にかき回します。切らす事なく薪を燃やし、気温によって20〜40時間、二交代制の付き切りで煮詰める事で、塩が出来上がります。この作業を経る事で、適度に 『にがり』(マグネシウムやカリウムなど60種類以上ものミネラルの成分=微量元素)を残せます。

「市販に流通している食塩は、塩化ナトリウムが99.9%ですが、バランスよくにがりが残されたものこそ、理想の塩です」と、これが小渡さんが最も重要視するポイントです。

その後、脱水槽で、余分な水分を抜き、さらに自然乾燥を行います。

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2工程のうちのもう一方は、天日塩として、温室のプールに送られます。かん水を、天日に晒し、夏場で20日・冬場で60日ほどかけて、結晶化させます。出来上がった塩を脱水槽に移し、こちらも自然乾燥。釜炊きとは微妙に異なる特有の風味にこだわるファンも多いそう。ただ、釜炊きとは異なり、天候に左右されるため、量産はできません。

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そして、2つ別々の工程を通して仕上がった塩は、共に最終段階の袋詰の作業に。一つずつ丁寧に、ごみや不純物が取り除かれパッケージング。逸品『粟国の塩』の完成です!

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おいしさと栄養の秘密は『にがり』にあり

こうして市場に送られる『粟国の塩』は、それぞれ内容量ごとに釜炊き塩の4種、天日塩の1種が揃います。いずれも、公正取引委員会認定の(原産地や製造方法を明記し、逆に消費者を惑わす自然塩や天然塩などの用語を使用しない規定を満たした)公正マークを持ち、さらに2009年には、農林水産省より『世界が認める輸出有望加工食品40選』にも選ばれました。国内はもちろん、アメリカやスペインに卸すなど、世界中のシェフを魅了しています。

その他、海水中の微量元素を多分に含んだ粟国のにがりも3種ラインナップ。豆腐作りはもちろん、野菜のアク抜き、煮物やご飯を炊く際に入れても風味が増します。

刺々しい辛味がなく、まろやかなしょっぱさで、ほのかな甘味まで内包する『粟国の塩』。その秘密は、澄んだ海水から得られる『にがり』、つまり栄養価の高いミネラルにあります。この“海の結晶”とも言えるにがりを含んだ塩は、どんな料理にも合いますが、何と言っても白身魚にぴったり! やはりマース(塩)煮が定番でしょう。塩で締めることで雑味が抜かれ、魚本来の味がありのままにくっきりと浮かび上がります。ミーバイやグルクンなど、いまいゆ(新鮮な魚)のマース煮は、ふわりと旨味が口の中に満ちてくる絶品です。

もちろん、沖縄料理に欠かせない豚肉との相性も良く、例えば、スーチカー(三枚肉の塩漬け)は、にがりが酸化防止の役割を担っています。沖縄料理以外では、シンプルに野菜の塩もみがオススメです。素材そのもののうまみが際立ちます。そして、その味わいを最も良く表しているのが、塩むすびです。白米はもちろん玄米とも相性抜群です。米を炊く前に、『粟国の塩』をひとつまみ入れてみてください。一口でその深い味わいに気づくでしょう。

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塩に人生の半分を費やしてきた研究所長の熱い志

ヨガや自然食(スローフード)にも造詣の深い小渡さん。

「昔から塩は汗の対価であり、労働の報酬でもありました。また塩は、食物を腐敗から守る殺菌力、神事に欠かせない神秘性を持ち、生命の糧であると同時に精神性にも大きな役割がありました」と、人生の半分以上を費やしてきた塩への想いを熱く語ってくれました。

「塩は生命に不可欠なものですが、選び方を間違えると健康を損なわないとも限りません。また、今日の減塩ブームもありますが、過度な減塩は禁物、“適塩”が大切です」と現代の食のあり方に対する憂いも…。

「母体の羊水は海水の組成と極めて似ています。まさに、“いのちは海から”。塩を通して日本が元気になるよう、そして世界中の人々が健康でいられるよう取り組んでいきたい」と、今なお高い志は、77という齢を感じさせない力強さがありました。

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ところで、島を代表する特産品『粟国の塩』も然ることながら、実はマースヤー(塩売り)と呼ばれる伝統行事も今なお行われているなど、塩との関係が実に深い、粟国島。他離島には無い個性的な魅力に溢れるこの島、ぜひ一度足を運んでみてください。少なくとも、お土産だけはもう決まりましたね(笑)。

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沖縄海塩研究所

住所 沖縄県島尻郡粟国村東8316
TEL 098-988-2160
備考 営業時間/24時間・年中無休 *見学は要事前電話連絡
URL http://www.okinawa-mineral.com/

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