那覇空港から東に約360キロ、1時間あまりのフライトで到着する南大東島(みなみだいとうじま)。島が有人島になったのは明治33(1900)年のこと。八丈島から来た玉置半右衛門率いる開拓団が、無人島だった島を開拓して117年という島だ。南大東島ははるか南の海で生まれた環礁が隆起しながら、何万年もかけて現在地へ移動してきたと考えられているそう。サンゴ礁も白い砂浜もなく、周囲が切り立った崖に囲まれているのは、そのためだ。島の成り立ちも自然も、そして歴史も、沖縄のほかの離島とはちょっと違う、特別な島へ!大自然の中のカヌー体験、そしてナイトツアーでの貴重な生き物との出会い…冒険の旅へ、出発!
南大東島のエキスパートを訪ね、カヌーツアーに挑戦!
今回挑戦するカヌーツアーは、南大東秘境探検ツアーを主催するオフィスキーポイントの東和明さん。南大東島のエキスパートだ。オールの持ち方の練習から始まり、約2時間のツアーに向け、入念なストレッチと準備体操をやっておく。「南大東島は環礁が隆起してできた島なので、外周が小高く、中心部が凹んだ盆地状になっているんです。島全体がカルスト地形なので、あちこちにドリーネ(くぼ地)があって、島には雨水がたまってできた池がとてもたくさんあるんですよ」と東さん。水路でつながった池もあるので、池から池へとめぐることが可能なのだそう。
天気が良くてよかった! ツアーに出発!
カヌーツアーは栄太郎池からスタート。昔この池の近くに栄太郎さんという方が住んでいたということでつけられた名前だとか。しばらく進むと、水路が見えてきた。小さな橋をくぐると、月見池に出る。月見橋をくぐって進むと、沖縄では2番目に大きいというひょうたん池に。「南大東のカヌーツアーは、とにかくのんびりしてもらうことを大事にしています。だから、良いコンディションの時にしか催行しません。少しでも風があると、水面もさざ波が立つし、南大東の良さをゆっくり見てもらえないから、カヌーツアーをやる価値がなくなる。そういう時はツアー自体を中止にします」と東さんはキッパリ言い切った。
良いコンディションの時に、自然の美しさをしっかり味わってほしいという言葉に、この島をこよなく愛する東さんならではの心意気を感じる。ちなみに、天候不良の時は洞窟探検をするケービングツアーをオススメしているとか。
きれいな水面を漕いでいく 心地よいカヌー体験
池はとても静かで美しく、空が鏡のように水面にうつる。カヌーを漕ぐ水音、鳥や虫の鳴き声、サワサワと植物が風になびく音、時々ガサっと岸辺の草が動く生き物の気配…自然の音だけが耳に届いてくる。カヌーを漕ぐ手を止め、子育て中らしく母鳥の後ろについて泳ぐダイトウカイツブリという白い鳥の行列や、タカの仲間である渡り鳥のサシバを双眼鏡で眺めた。「この島は渡り鳥にとって、太平洋のオアシスなんです。海原の中に真水の池があるって、貴重でしょう?渡り鳥だけじゃない。100年以上前に八丈島から来た人たちが、断崖へ飛び移って上陸して、真水のある池を見つけた時に、『この島で生きていける!』と思ったそうです。真水があったから、無人島だったこの島を開拓することができたとも言えます。実は、池の水は表面は真水ですが、深いところは海水なんですよ。南大東島の地下は2,000メートルほどが石灰岩で、海に浮かぶスポンジのようなものだから、池の底の方は海とつながっているんです。」何気ない説明の中にも、南大東島の自然や歴史が、いかに貴重かが伝わってくる。東さん、タダモノじゃないな!
ちょっとワイルドに!? 水路を横切り隣の池へ!
途中でクサトウケイソウを発見。東さんによるとパッションフルーツの原種だそうで、小さい実が熟すととても甘いのが特長。食べてみたら、ホントに甘かった!
「今までゆっくりと自然を満喫してきましたが、この辺でちょっとワイルドに行きましょう」と東さん。フトイという水草の生えている水路を横切って、隣の池に抜けるのだという。「カヌーの勢いが止まったら最後ですから、助走をつけて、一気に行きますよ!」フトイの林に向かって、10数メートル下がる。ドキドキ…。「じゃ、行きましょう!」がむしゃらに漕いで、なんとか反対側に出られた。「ね?ワイルドでしょう?」「確かにワイルドですね。」ちょっと懐かしめのギャグが、心地よい疲れをどこか遠くへ運んでくれた。
カヌーツアー終了!
いよいよゴール。「カヌーにも慣れてきましたね」と、東さんからお褒めの言葉をいただき、再び栄太郎池へ。カヌーと岸をオールで橋渡しして、滑らないようにぐっと押さえ上陸!2時間のカヌーの旅、おつかれさまでした!
今夜の宿泊は、 コテージKIRAKU
リゾート施設「リゾートコテージKIRAKU」で宿泊。各部屋が戸建てのコテージタイプで全室ロフト付きなので、一人旅からファミリーまで快適に過ごせそう。ジャグジー付きのコテージもあるので、予約時には要チェックだ。飲食店やレンタカーは施設から徒歩数分の距離に数軒あるので便利。まずはチェックインして、カヌーツアーの疲れを癒やすことに。夜の南大東島にはどんな景色が広がるんだろう…、期待に胸が膨らむ!
夜はいっそう神秘的な表情に。 ナイトツアーへGO
夕食を終えた21時。いよいよナイトツアーが始まる。「まずは星を見に行ってみましょうか」と、西側の岸壁に面した夕日の広場へ。集落の光が遮られ、星の名所でもある。しかもこの日は新月に近く、月の光がほとんどない。つまり、夜空が本当に暗いのだ。見上げると、満点の星!天の川もハッキリ見える。自分たちが普段、いかに明るい夜空しか見ていないかというのがよくわかる。「あれがすばる、北斗七星も見えますね」東さんが懐中電灯で夜空を指すと、光が伸びて指示棒のように見える。カシオペア座、いて座、やぎ座…星座を教わっているうちに、目が慣れてくるのが不思議。逆に星が多すぎて、どれが星座なのかわからなくなってくるほど。
ダイトウコノハズクを探して
星空観察の後は、野生生物を探しに探検。東さんによると、この島にしか生息していないダイトウコノハズク(リュウキュウコノハズクの亜種)は、懐中電灯の白っぽい光が苦手。そこで一人一本ずつ、赤いライトを持ち、まずは集落の近くにいることが多いというダイトウオオコウモリを探すことに。「ダイトウオオコウモリは好奇心旺盛なんですよ」10分ほど歩いて、その姿を確認することはできたが、写真は撮れず残念!「次はダイトウコノハズクを探しに森の中の遊歩道へ行きましょう。ダイトウコノハズクは警戒心が強いから、ナイトツアーで姿が見えるのは、10回に2回程度。あとの8回は、鳴声や羽音が聞こえるだけです。出会えたらラッキーですね」
東さんがオスの鳴き声を真似しながら歩くと、頭上の枝からメス特有の短い鳴き声が聞こえた。それも複数!ダイトウコノハズクは男性のにぎりこぶしぐらいの大きさなので、暗闇に目が慣れても、森の中ではなかなか見つけられない。この日は、何度も複数のメスの鳴き声が「聴こえて」いたが、その存在を目視することはできなかった。
夜の森で光るキノコは、 ちっちゃいけれど抜群の存在感
ダイトウコノハズクを探して歩いていたら、足元にぼんやりと黄緑色に光る点々が。森の中に、ところどころ散りばめられたように広がっている。これが光るキノコか!
「エナシラッシタケの一種です。エナシは、柄が無いと書くんですが、形としてはキノコのカサの部分だけで軸の部分がないんですよ。大きくなっても数ミリという、小さなキノコです。大東諸島の固有種、ダイトウビロウの朽ち木にしかつかないという不思議な生態です。実はずっとこの光るキノコの種類がわからなかったんですが、3年前に国立科学博物館から菌類の専門家が来て、やっとエナシラッシタケの一種だということがわかりました」え?3年前に?それって新種なのでは?「いえ、新種かどうかはまだわからないんですよ。でも南北大東島は絶海の島で、固有種も亜種も多い。独特の生き物が多いから、年間を通して調査に来る専門家の数は、多分、観光客よりも多いんじゃないかな(笑)」
それだけ貴重な自然が残されている南大東島。次は美しい鍾乳洞や地底湖のある景色を、探検しながら楽しめるケービングやエキサイティングなアドベンチャーも体験してみたい!
島の自然に魅せられ、 南大東島に移住した東さん
島の自然を知り尽くした東さんは、実は東京の出身。「昔、ひょんなことで1カ月の長期休暇をもらうことになって、南大東に来たんです。その時、星空にすっかり惚れ込みました。ここまで星の多い夜空は見たことがなかった。これを見に島へ通うか、島に住んで毎日見るか迷って、結局住むことにしたんですよ」と、島に移住した動機を話してくれた東さん。今ではカヌーツアーやナイトツアー、ケービング(洞窟探検)など、島の大自然を満喫させてくれる達人ガイド。「南大東の自然は、特殊で本当に面白い。夏場は岩場をくりぬいて造った、太平洋一体型のプールで泳ぐのも楽しいですよ。秋から冬にかけては、植物の専門家が数多くやってきます。特に海軍棒プールの周辺の海岸は、希少な固有種がたくさん。それぞれ、時期によって花を咲かせるので見飽きません」
渡り鳥が羽を休め、固有種や亜種の動植物が多い南大東島。冬の製糖期になると、島じゅうに甘い香りが漂うのだとか。白い砂のビーチはないが、いつ来ても、その時期ならではの楽しみがあるって、実はすごいことではないだろうか。いわゆる観光地とは違った魅力あふれる南大東島。離島マニアの間で「最後の離島」と言われるのも、わかる気がする。今度はいつ来ようかな、と思い始めている自分に少し驚いた。
Information 基本情報
オフィス・キーポイント
住所 | 沖縄県島尻郡南大東村字在所52 |
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TEL | 090-5082-4949 |
備考 | カルスト湖沼群カヌーツアー一人6,000円(税込み) 所要時間:約2時間 ナイトツアー一人4,500円(税込み) 所要時間:90分~ ※ケービングツアーは一人8,500円 |
URL | https://www.facebook.com/OfficekeypointDongsabow |
リゾートコテージKIRAKU
住所 | 沖縄県島尻郡 南大東村池之沢341 |
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TEL | 09802-2-2293 |
備考 | |
URL | https://www.facebook.com/OkinawaKiraku/ |