TVドラマ『瑠璃の島』(2005年)で一躍有名になった鳩間島(はとまじま)。周囲3.9キロメートルと、徒歩でも1〜2時間程で一周出来る、八重山(やえやま)諸島では最も小さな有人島です。人工的な観光スポットはほとんどなく、そこにあるのは手付かずの豊かな自然、“鳩間ブルー”と呼ばれる瑠璃色の海、そして屈託ない笑顔に包まれた人々の暮らし…。穏やかな島時間に包まれたこの素朴な島を、レンタル自転車で気ままに周遊してみましょう。
まずは基本情報をご紹介。地理的には、石垣島の西北およそ38.3キロメートル、西表島の北およそ5.4キロメートルに位置します。アクセスは、石垣港離島ターミナルから高速船(または貨客船)でおよそ40〜45分(西表島経由の場合70分)。面積は0.96平方キロメートル程で、人口は約60人。隆起サンゴにより生まれた島で、形状はほぼ円形。周縁部は概ね平坦ですが、中央部にちょっとした丘陵(後述)を擁します。島内は、大まかに南部に港・集落があり、北部はほぼ農地です。
サイクリングをする際は、小さな島ならではの凸凹道もあるので運転にはご注意を! 一周できる路地はもちろん、島を縦断している小道も野草が鬱蒼と生い茂った、オフロードです。
それでは、いざ出発♪ まずは、集落からほんの数分。島一番の見所である丘陵部「鳩間中森(ハトマナカモリ)」をチェックです。まさに、名前の由来とされる、“島の中央に位置する森”は、島で最高地点となる海抜33.8メートル。八重山民謡『鳩間中森』でも知られる景勝地です。
入口から石段を登り、クバなどの樹々に囲まれた坂道を少し登ると、島のシンボルである高さ16メートル、純白の「鳩間島灯台」が姿を現します。
その隣には、復元された石造りの「物見台」があり、上部からは四方を瑠璃色の海に囲まれた緑豊かな鳩間島をパノラマで一望…。その美しさにド肝を抜かれました! ちなみに、入口付近にある「友利御嶽(トモリウタキ)」は、島の創建にまつわる神聖な拝所で無断での立入りは厳禁です。
それでは、いよいよ島の外周を囲む路地を辿って一周です。集落から時計回りで行く場合、最初に目指すは、西岸に広がる「屋良浜(ヤラハマ)」。鳩間島で一番広いこの天然のビーチでは、ガジュマルの木陰が優しいひとときを与えてくれそうです。
そこから少し北上した右手にあるのが「夫婦岩」。昔、この辺りに仲睦まじい夫婦が暮らしていたことから名付けられた2つ大きな石を指します。ヤブの中にあるため、少し見つけづらいのですが小さな看板を目印に、探してみて下さいね。
続いて向かったのは、北岸の西側にこぢんまりと佇む「立原浜(タチバルハマ)」。この海辺は、干潮時にはリーフ近くにタイドプール(潮溜まり)が現れるなど、起伏に富んだ豊かなサンゴ礁が特徴です。但し、満潮時はアウトリーフから波や潮が入り込むので注意が必要です。
そのすぐ隣の石積みが、「武士家跡(ブシヌヤーアト)」です。この場所は昔の物見台の跡地で2010年に復元されました。ただし、石積みは崩れやすいため、登らないようにしましょう。
北岸からなだらかに続く東海岸には「外若浜(フカバカハマ)」(写真)、さらに南下した島の東端には「船原浜(フナバルハマ)」が位置します。いずれも北部の浜辺同様、決して広くはないですが、人が来ることはほとんどない、ちょっとしたプライベートビーチ感覚を味わえます!
途中、ちらほら見かける山羊と戯れるなど、気ままに約1時間、島を一周し、集落に戻って来たところで、ランチタイム♪
船原浜に程近い『海風』で休憩です。開放感たっぷりなオープンテラスでいただくのは、日替わりランチの「シーフードカレー」(700円)! タコやイカ、貝など、島の旬な海の幸がたっぷり入ったオリジナル。サイクリングで疲れた体に染み入るおいしさです。
食後は、集落の周辺をのんびり周ってみましょう。まずは、海風の裏手にある「下り井戸(アンヌカー)」と呼ばれる自然洞の井戸へ。昔、島民の唯一の飲料水だったこともあり、島の歴史に触れられる貴重な場所です。
集落内には、昔ながらの建屋や風情漂う石垣、そしてハイビスカスに彩られた街路樹…。さらに、樹齢を重ねた巨大なガジュマルに、名物の浮球アートなど、ちょっとしたポイントがあちこちに潜んでいます。
心地良い疲労とともに訪れる夕暮れ時。今一度、屋良浜に足を運んでみて下さい。西表島の横に沈みゆく幻想的なサンセットが、楽しかった一日を静かに終わらせてくれるでしょう。寄せては返す穏やかな潮騒に包まれつつ…。
開発の手が及ばない豊かな自然と、静寂に満ちたロケーション。そして輝きを失うことのない美しい海を眺めつつ、ゆるりと流れる島時間に身を任せる…。するとほら。島旅メモリーに、また一つ。“瑠璃色”という新しい色が、加わったようですね。