大東諸島とは、人が住んでいる北大東島と南大東島、無人島である沖大東島と周辺の小さな島々のこと。那覇空港から東に約360㎞と遠く離れている。今回訪れる北大東島に開拓のために人が上陸したのは明治36(1903)年のこと。それまで無人島だったというこの島は、天然のビーチがなく島の周囲はグルリと岸壁に囲まれた独特な地形をしているのだ。周囲はなんといっても太平洋の大海原!漁港や岩場でマグロなどの大型外遊魚が釣れることもあるという、愛好家に知られる海釣りのスポットだ。大物を狙って、いざ北大東島へ上陸!
釣り場の情報と釣り餌を入手!
那覇空港から北大東島へ直行便で飛ぶ飛行機は週に3回で1日1便、約1時間のフライトで到着。直行便のない日は南大東島経由で行くことになる。運航スケジュールは時期によって異なることもあるので、予約時にはご注意を。ちなみに、船で訪れる場合は那覇から約15時間のクルーズ。おもしろいのは、断崖に囲まれた島のため船の着岸ができず、人も貨物も、クレーンに吊られて上陸をすること。船旅とクレーンでの上陸もゆっくり体験してみたいと思いつつ…、今回は飛行機にて上陸!天候にも恵まれ最高の釣り日和だ。今夜のお宿である「ハマユウ荘 うふあがり島」に一旦チェックインしたら、一息つく間も惜しんで早速レンタカーで釣りに出発することに。まずは、北大東観光案内所に立ち寄り、海の様子や良質な釣り場の情報収集を。地元ならではの情報を教えてもらえるので安心だ。そして、今回は島の人たちにも人気が高いという西港へ向かうことに。途中、釣りのエサを扱っている浅沼商店で小エビやオキアミなどの釣りエサを購入。早く釣りたい!とウズウズしてくる。
いざ、西港へ!第一釣り人発見!
ちなみに西港はその昔、リン鉱石を出荷するために造られた港だという。昭和25(1950)年に鉱山は操業を停止。今はリン鉱石の貯蔵庫跡が廃墟となって広がっており、人気の観光スポットとなっている。港に到着すると、これ以上ないほどの広く青い海が広がっている。見れば、地元のお父さんがすでに釣り糸を垂れている。「釣れますか?」と声をかけたら、「今日はダメ。魚がいないさー」と言いつつも、見る間に40センチはありそうなツムブリを釣り上げた。「すごいじゃないですか!」とテンションも上がる。
セッティングもぬかりなく
重いけどがんばって持参した愛用の釣り具を広げ、セッティング開始。いきなりマグロとはいわないが、ガーラぐらいは釣って帰りたい…。観光案内所で教えてもらった情報によると、島ではムロアジを「雑魚」だと言って食べないのだとか。ムロアジが釣れたら、それを生餌にしてマグロなどの大物を狙うのだという。先客のお父さんは「普段はイカとかマグロの腹皮とかの切り身がよく釣れるよ」とアドバイスをくれた。まずは那覇から持ってきたタコをエサにしてみよう。風もおだやかな釣り日和!ヒュンと釣竿を振れば、エサをつけた釣り針が快調に飛んでいった。
安全&手軽な港釣りでも十分楽しめる!
サンゴ礁がない北大東島は、岸壁から釣り糸を垂らせばいきなり外海!風向きや潮、波のコンディションによって、いくらライフジャケットを身につけても、波をかぶりそうな岩場はやめておいたほうがいい。今回は風、潮、波すべて穏やかだとの地元情報で、安心して釣りを楽しめた。
釣り糸を垂らしてから数時間。透明度が高いため、釣り針の周りに寄ってくる魚影も見え、エサを噛む感触が手に伝わり、心地よい。とはいえ、当たりは何度もあるのだけどなかなかしっかり食いついてくれない。もどかしさはあれど、これも釣りの醍醐味。だからこそ、グンっと力強く釣り糸が引かれた瞬間は、興奮も最高潮に!最初に釣れたのはヒラメ。小ぶりだが、釣れた感動は何度味わってもいいものだ。結局、この日はムロアジ、グルクンの仲間、イラブチャー、ヒラメが釣れた。まずまずの釣果!釣った魚は郵送で自宅に送ることにした。日も暮れ始めたので、そろそろ切り上げ時。
意外な場所で島の歴史に触れる
宿に戻る前に、西港のすぐ近くの建物群に立ち寄ることに。ここはリン鉱石の貯蔵施設や積み出し施設の廃墟が多く残り、一部を魚市場や居酒屋に再利用しているという。リン鉱石は肥料やマッチの原料として本土へ送っていたが、良質なリン鉱石が少なくなってしまったため、鉱山は閉鎖になったのだそう。一角には明治から昭和にかけての古写真が展示されているスペースもあり、ちょっとしたギャラリーになっていた。リン鉱石を手掘りで採集する人たち、戦前のお祭りや農業の様子が無料で見られ、この島を開拓した当時の苦労に思いを馳せる機会となった。島の成り立ちを知ると、より一層その島を好きになれた気がする。
今夜はゆっくりハマユウ荘うふあがり島で
北大東島には宿泊施設がふたつある。ひとつは戦前からの木造建築が国の文化財に指定されている「二六荘」。昔はリン鉱石の会社が所有する宿舎だったが、今は民宿になっているという。もうひとつが、今回宿泊することにした「ハマユウ荘 うふあがり島」だ。中庭や大浴場があり、施設の整った公共の宿という雰囲気。その日は他にも東京から来たという宿泊客もいて、食事をしながら釣りの話しに花を咲かせた。こんな出会いも離島の旅ならではだ。ハマユウ荘のスタッフによると、北大東には釣り船があるという。今度は釣り船だな、と夢がふくらんだ
翌日は北大東村民俗資料館を見学
翌日は朝早く起きて、帰りの飛行機の時間まで島内観光をすることに。まずは、島を訪れる前に見学予約をしておいた「北大東村民俗資料館」を訪問。ここは、なんと朝9時から10時までの1時間しか開いていない予約制の観光スポット。北大東島の自然から歴史まで、多彩な資料が揃った場所で、開拓当時の生活用品や生活様式などの展示は、とても貴重である。八丈島出身の玉置半兵衛の会社「玉置商会」が南北大東島を開拓したこと、八丈島や本土から人材が入ってきたため、沖縄よりも本土の文化の影響が強いこと、戦後は本土の人の多くが帰ってしまったため、沖縄出身者が多数派になったことなど、知ってるようで知らなかった島の歴史を学び、短いながら充実した1時間を存分に楽しんだ。江戸相撲や神輿などの日本文化、八丈寿司によく似た大東寿司などと、沖縄の文化が混じった独特のチャンプルー文化があるのは、大東諸島だけだ。
沖縄海と沖縄最東端の碑
そして、最後にやってきたのは、「沖縄最東端の碑」!もちろん、しっかり記念撮影。碑のすぐそばには人工ビーチである「沖縄海」という岸壁プールがあり、波がおだやかな日の干潮時には海水浴も楽しめるそう。この日は波が荒かったので、海に入ることはできなかったけど、驚くほどの海の透明度は、陸から見てもよくわかるほど。ただ、ここは波が高い日はプールまで降りて行かないほうが無難だろう。打ち寄せられた砂でできた砂だまりもあり、きっと沖縄で一番小さなビーチなのかもと思う。釣りを楽しみ、廃墟を歩き、島の歴史に触れた1泊2日の北大東島の旅。海釣り好きはもちろんのこと、観光も一緒に楽しめる。気軽に訪れてみて欲しい!
Information 基本情報
北大東村民俗資料館
住所 | 沖縄県島尻郡北大東村字中野152-1 |
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TEL | 09802(3)4350 |
備考 | 営業時間:平日9:00~10:00 休館日:土・日・祝祭日、年末年始(12月28日~1月3日) 入場料:200円 ※入館希望の場合は、宿泊先または北大東村教育委員会(09802-3-4138)まで連絡 |
ハマユウ荘 うふあがり
住所 | 沖縄県島尻郡北大東村字中野152-9 |
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TEL | 09802-3-4880 |
備考 |