宮古島南西部、与那覇にあるスローライフ、スローフードのお宿、「津嘉山(つかやま)荘」。自家製の無農薬野菜と地元の食材を存分に使った郷土料理、素朴でアットホームな居心地の良さが人気のお宿です。特に、明るい笑顔がトレードマークのおかみさん、千代さんはTVや映画にまで出演する宮古島の有名人。そんな千代さんに、代々伝わる郷土料理の作り方をたっぷりと教えてもらいました!
お店に入ると壁一面に郷土料理のレシピがズラリ!!千代さんは学校などへも出前講習を行っているそうです。ここにも紹介されている「ゆし豆腐」は、今でこそスーパーで買う家庭がほとんどですが昔、宮古島では豆腐は「家庭で作るもの」、というのが常識だったそうです。島の子どもたちに伝統的な家庭料理を教えて、継承していくことが千代さんの願いなのです。
千代さんの畑でとれたたくさんの島野菜。キュウリ、パパヤー(=パパイヤ。沖縄ではフルーツとしてではなく炒め物などに使用します。)ナーベーラー(へちま)、ゴーヤー、ネリ(オクラ)、ピーマンが並びます。では早速、採れたての島野菜を使って料理体験スタート!
作るメニューは時期により変わります。作るメニューはなんと8品!これを約1時間で作ります。
・ゆし豆腐
・パパヤーしりしりー(パパイヤの炒めもの)
・ナーベーラー(へちま)の炒めもの
・ピーマンの丸ごと炒め
・ゴーヤーの炒めもの
・ネリ(オクラ)の酢の物
・キュウリの炒めもの
・切り干し大根と煮干しの和え物
まず料理体験を始める前に千代さんの信条を聞きます。「正しい食事は正しい心と体を作る」、「スローフード、シンプルな料理が心と体を元気にする素」だと教えてくれます。
千代さんは島中の食堂を回ったとき、化学調味料を使った料理が多かったことから、「昔ながらのシンプルな食事を提供したい」という想いが強くなり、この料理体験を始めました。
今では「スローフード」という言葉は当たり前に使われていますが、千代さんは、そのずーっと前から、生きた宮古島の郷土料理を提供し、宮古島版スローフードを体現していたのです。
千代さん手作りの黄色いエプロンを着たら料理体験が始まります。手作りのエプロンは40着程度あるそうです。まずは何事も見た目が肝心!かなりやる気になってきました〜!
約50年前に、千代さんと一緒に嫁に来た盥(ボール)です。かなり年季が入っていますがそれがなかなかいい味出しています。もちろん、現在も現役です。
まずは「ゆし豆腐」作りからスタート!「ゆし豆腐」とは、豆乳ににがりを加え、固まる手前の状態を指します。やわらかくふわっとした風味と濃厚な味わいが特徴です。
事前に一晩水につけてあった大豆をミキサーで撹拌(かくはん)します。
千代さんと、宮古島の魅力や、他愛もない話題でゆんたく(おしゃべり)しながら待ちます。豪快な千代さんの笑い声を聞いていると、こちらまで楽しくなってきます。
大豆を撹拌(かくはん)しながら、並行してパパヤー(パパイヤ)をしりしりー器でしりしりー(千切り)します。しりしりー器とは沖縄定番の調理器具。いわゆるスライサーのことですね。
慣れない手つきでしばらくしりしりーしていると、千代さんが来てお手本を見せてくれました。意外とコツがいるようです。早くも眉間にシワが…!
千代さんの腕にかかったら、あっ!と言う間にしりしりー完了です。さっすが熟練50年の腕前!
次に、撹拌した大豆を木綿の袋に入れて漉して(こして)いきます。ここはゆっくり、じわーっと丁寧に行います。
大豆を漉して(こして)いる間に並行して、しりしりーしたパパヤーと人参を炒めます。
そうこうするうちに、既に横で千代さんが大豆を木綿の袋の中に全部いれて、絞り始めていました。ここで千代さんと交代です。
大豆が入った木綿の袋を、ぎゅうぎゅう絞ります。これがなかなか、進みません。焦らず、じっくりじっくり。風味豊かなゆし豆腐の完成を想像しながら、丁寧に絞ります。
そして隣ではしりしりーを炒め始めています。炒め物のジャッ、ジャッという音と、香ばしい香りが漂ってきました。
さてと、千代さんに、しりしりーを炒めてもらっている間に…。
大豆がやっと絞れました!
絞った液(大豆)を温めるために、鍋に移します。
一方でしりしりーも最後の工程の味付けです。味付けは実にシンプル。醤油をざっとかけて、鰹節をわさっと入れるだけ。
パパヤーしりしりーができました。沖縄では熟する前のパパヤーを野菜として使います。パパヤーは、カルシウム、カリウム、ビタミンC、カロチンが豊富!
今度はナーベーラー(へちま)を下ごしらえ。まずはピーラーで皮を剥いていきます。ナーベーラーはゴーヤーと並ぶ沖縄の代表格。特にビタミン、ミネラル、カルシウム、カリウム、カロチンが豊富です。
良質なオリーブオイルでささっと炒めます。油馴染みがとてもいい上に、歯ごたえも良さそうです。作る側も食欲が湧いてきます。
ナーベーラーの味付けも醤油と鰹節のみ。食材の味を最大限に生かす味付けです。
さて、そんな中、隣で温めていた大豆の絞り汁が煮立ってきました。
続いて、ゆし豆腐を作る一番のポイント!海水をゆっくりとまんべんなく、ムラができないように上手に流し込み固めます。通常はにがりをいれますが、沖縄では古くからにがり成分を含む海水を使用していました。千代さんのゆし豆腐も昔ながらの製法で作ります。
さあ、きれいに固まるでしょうか。
おお!
美味しそうなゆし豆腐ができました!
すると、千代さんがおもむろにゆし豆腐の上澄みの方を先ほどのナーベーラーの炒めものに入れました。なるほど、これが隠し味になるわけですね。
ナーベーラーの炒めものの完成!今回は、炒め過ぎてナーベーラーの形がなくなり、ちょっと反省。炒め方も意外に難しいのですね。
さて、続いてはピーマンの丸ごと炒め。手でピーマンの中の種をくり抜きます。切らずにまるごと豪快に仕上げるのだそうです。
油でささっと炒めて醤油で味付けした上に鰹節を乗せたらピーマンの炒め物が完成!
ゴーヤーも切ります。縦に半分に切り、中の種を取り出します。そして、1.5cm幅程度に切ります。あえて厚く切ることでゴーヤーの食感が良くなるのだそうです。
ゴーヤーも醤油と鰹節で仕上げます。
あっと言う間にゴーヤーの炒め物ができあがり!
続いてネリ(オクラ)。
栄養が沢山ある萼(がく)は切り落とさずに硬い部分のみ取っていきます。
ネリの切り方は難しくてなかなかコツがつかめません。千代さん、笑ってないで助けて〜。ネリはゆがいて酢の物にします。
さあ次はキュウリの炒めものです。約3センチの長さに切ります。
キュウリの炒めもの完成!こちらも醤油と鰹節を加え最後に一味をいれてピリ辛に仕上げます。
そうこうしているうちに隣で千代さんがもう一品。切り干し大根と煮干しの和え物。
戻しておいた切り干し大根に煮干と醤油、胡麻油を加えて混ぜます。
え?これだけでいいの?
一品完成!ご飯のおかずに最適!
ネリの酢の物も完成!
最後にご好意で千代さん特製のラフテー(豚の角煮)を用意してくれていました。
手作りゆし豆腐を盛り付けます。荒削りの鰹節にまみれて豆腐があまり見えませんが、一人前でもたっぷりあります。
全ての料理が出来上がりました!さあ頂きましょう!
お料理のほとんどが同じ味付け(醤油と鰹節)のはずなのですが、シンプルな味付けの中に島野菜本来の味や食感が生かされていて、全くそんなことを感じさせません。千代さんと、ゆんたくしながら至福の時間を過ごします。
本当の贅沢とはなにか。その答えを調理過程で教えてくれる千代さん。同じ味付けのはずの一品一品の野菜本来の味が、飽きることなくいただくことができて、同時に体が元気になっていきました。「絶対毎日食べていたら健康になるな」と確信する、千代さんの料理と素敵な笑顔を、是非体験してみてくださいね。
お問い合せ先 | 津嘉山荘(つかやまそう)【今回の取材先】 |
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所在地 | 沖縄県宮古島市下地字与那覇149 |
TEL | 0980-76-2435 |
体験料金 | 1食2,000円 ※プラン詳細、お申込みについては上記「お問い合せ先」までお願いします。 |
おおよその所要時間:約2時間(料理体験、食事)料理体験約60分