渡名喜島でスロートラベル
気の向くまま、心赴くままに旅をする。そんなスロウな旅(スロートラベル)へあなたを誘います。今回は沖縄の離島・渡名喜島(となきじま)へ。島の風土や体験、感じた想いなどを綴ります。
スロートラベルという言葉をご存知でしょうか。スロートラベルとは、旅程をぎゅっと詰め込まず、気の向くままに心の向く場所へ行き、その土地の風土をたのしむ旅行のスタイルのこと。地域の人々やその文化・風土との「繋がり」を大切にしながら、自ら体験をして地域社会、教育、環境に旅の重きを置いているのが特徴です。
渡名喜島ってどんな島?
渡名喜島は 那覇市の北西、約58キロのところにある離島です。手付かずの自然が広がり、フクギ並木や赤瓦の古民家などの沖縄らしい景色が今も残っています。島では、のんびりゆっくりと「何もないことを楽しめるかどうか」がポイント。美しい自然の中で、何もしない贅沢を味わえる島です。
渡名喜島までのアクセス情報
沖縄本島から渡名喜島へは船でアクセスが可能です。那覇市にある泊(とまり)港から フェリーで約2時間です。フェリーは1日1便(往復)が運航しています。久米島行きで渡名喜島を経由しない便があるので注意。日帰りは難しいので島内宿泊が前提です。
スロウな渡名喜島の旅へ
渡名喜島へは沖縄本島にある泊港からフェリーに乗ります。この日は風が強くほかの離島では欠航となっているところもありました。フェリーの発着が海の状態に左右されやすいため、コンディションが悪くなれば離島へ寄港できない可能性もあります。船は出るようなのでそのまま乗り込むことに。もし島に辿り着けなかったら、その時はその時。こういった状況を楽しむのもスロートラベルの醍醐味と言えます。
船内のごろ寝できる客室でうとうとしているうちに、渡名喜島到着のアナウンスが聞こえてきました。どうやら無事に入島できるようです。渡名喜島に降り立つと、今回島でお世話になる宿泊先「ふくぎ屋」の南風原さんがお出迎えしてくれました。まずは車で宿に向かいます。
「ふくぎ屋」は赤瓦屋根の古民家を再利用した宿で、一棟貸切で宿泊できます。部屋から見える庭やフクギの眺めも美しく、ゆったりとした時間が流れます。
部屋に荷物を置き、島の北側にある「あがり浜」に向かいます。浜でゆっくりしていると南風原さんが青いバケツを持ってやってきて、一緒にハマグリを探してみることに。南風原さんが見本を見せてくれ、同じように足や手で砂をかき分けてると白い小さな貝を発見。
採ったハマグリは塩抜きをして宿の食事で出してくれるそう。俄然やる気が湧いてきて、しばらくはハマグリを掘るのに夢中になっていました。
渡名喜島といえば、フクギの木が立ち並ぶ白砂の小道が有名です。沖縄では、かつては家の周りを取り囲むようにフクギを植えていました。これは台風の風をしのぐ防風林としての役割があります。
たしかに浜辺は風が強かったのに、フクギ並木の中は風をほとんど感じません。静かな小道を歩きながら島時間を堪能しました。
今日は偶然、島の子どもたちがヒマワリのタネを蒔くイベントがあるそう。観光協会の方がもし良かったらと誘ってくれました。フクギの集落を抜け出し畑まで行ってみると、畑に集まる子どもたちの姿が見えてきました。
タネの撒き方の説明が終わると、子どもたち十数人が一斉にタネ入りの紙コップを片手に種まきをはじめました。ヒマワリは緑肥用で、12月に花を咲かせた後に刈り取りその後は渡名喜島名産のもちきびが植えられます。
「芽吹く頃にまた訪れてみるのも良いな」等と考えながら、ワイワイと皆で種をまきます。島の人々や生活と触れ合うと旅の面白味が増します。
渡名喜島ではウミガメにも出会えると聞いていたので、南風原さんに案内してもらいウミガメを見に行くことにしました。風が強く水面が荒れていましたが、よく見るとウミガメの影が見えます。「ほらあっち!」「あ、ここにも!」と言いながら、息継ぎのために水面に上がってきたウミガメを探すのはとても楽しい時間でした。
たっぷり遊んだあとは、夕食をいただきに「ふくぎ食堂」へ。渡名喜島のもちきびに島にんじんなど地元食材たっぷりの夕食。お味噌汁には先ほど獲ったハマグリが入っていて嬉しくなります。
夕食を食べ終わり外に出ると、白砂のフクギ並木を照らすフットライトが灯ります。宿に戻るまでの道を少し遠回りしながら美しい夜道を楽しみました。
島の空気に触れ、元気な子どもたちと出会い、賑やかな1日となりました。翌朝、外にでると、フクギ並木から差し込む美しい朝日が見れました。フットライトが灯る夜道が有名ですが、朝の時間も素敵です。
フクギの小道では、島のおばあちゃんが掃除をしています。「朝起き会」と呼ばれるものが週3回行われており、島民がフクギ並木を掃除しているそう。心安らぐ風景は、島の人々に守られているのだと感じます。
1泊2日と短い時間ではありましたが、渡名喜島のスロウな時間のひとつひとつが心に記憶されました。渡名喜島にはまだまだ色んな見所があります。また来たい、そんな場所のひとつになりました。