忙しない日常を少し離れて、オフシーズンの宮古島へ。
飛行機から下を覗くと、やさしい色合いの海が広がっていて、心をときめかせてくれた。
暖かい気候に濃い緑の植物、そして島の人たちとのふれあいなど、都会では得られない体験を求めて、みやこ下地島空港へと降り立った。
宮古島のいいものをアートで体感
伊良部大橋を渡って向かったのは、雑貨ショップ「DESIGN MATCH(デザインマッチ)」。
ユニークな商品がそろっていると評判で、ぜひ訪れてみたいと思っていたお店。
店主でデザイナーの下地真千子さんが、普段目にする風景や島に息づく伝統行事などをモチーフにイラストを描いて、それを商品に展開。かわいいのはもちろん、色使いも豊かで遊び心もプラスされているから、商品を手にすると、つい笑顔がこぼれてしまう。
店内には、アクセサリーからTシャツ、手ぬぐいなどのグッズがいっぱい!
下地さんにおすすめを聞くと「このアイシングクッキーはいかが?」との返事。
宮古島で人気の警察官人形「宮古島まもる君」をはじめ、島で生産しているマンゴー、美しい海で暮らす生き物たちなど、宮古島のいいものを形にしたクッキーは、食べてしまうのがもったいないくらいの愛らしさ。
もちろん、おいしさだって折り紙つきだ。
「宮古島にはいいところや、魅力的な文化がたくさんあります。島に来た人たちに、少しでも興味を持ってもらえたらと思い、デザインしているんです」と話しながら下地さんが手にしたのは、1枚のTシャツ。そこに描かれていたのは、ピンク色のげんまいドリンク。なんでも、もち粉と砂糖を水に溶かし、食紅で色を付けて作られている伊良部島の飲み物で、とろ〜りとしてとっても甘いんだとか。
ほんの少しの時間、下地さんとおしゃべりしただけなのに、ますます宮古島が好きになった。
お目当はハンドメイドのアクセサリー
次に向かったのは、南に位置する来間島。
浜に漂着した流木や貝殻などでアクセサリーを作っているという「utatane」を訪ねた。
絵本に出てきそうな、おしゃれな建物が印象的だ。
扉を開けると、ピアスやペンダントが目に飛び込んでくる。
すべてがハンドメイドで作られているので、ひとつとして同じものがない。
同じ素材でも流木や貝殻それぞれに個性があり、違った表情が楽しめる。
手がけているのは、竹下義司さん、友香さん夫婦。あえて同じテイストにはせず、それぞれが好きな形、好きなデザインで作っているのが、魅力のひとつ。クジラの歯や流木などを使った、ちょっとワイルドな雰囲気のネックレスやキーホルダーなどを手がける義司さん。友香さんは、夜光貝や黒サンゴなどを丁寧に磨き、繊細な作りのピアスやブレスレットを作っている。
左から時計回りに、夜光貝のピアス、シルバーのブレスレット、マッコウくじらのペンダント、黒珊瑚のピアス。いつでも島の思い出を呼び起こしてくれる、素敵なアクセサリーたち。
もし、壊れてしまっても、郵送すればすぐに直してくれるサービスも嬉しい。
「貝殻や流木は、ビーチを歩いて自分たちで見つけたり、島の漁師さんやレストランのシェフさんからいただくこともあります。貝殻は、磨けば磨くほど美しくなります。鮮やかな色を出すことにこだわっているんですよ」と展示スペースと対面した作業スペースから聞こえてきた。
作業の様子が見えるアトリエは、交流の場。お客さんとの会話を大切にしているんだそう。
軽快なトークの義司さんに、笑顔で絶妙な相槌を入れる友香さん。二人と話していると初めて会ったはずなのに、古い友人と話しているような不思議な感覚に。
ちなみにショップと隣接している自宅は、すべて義司さんが手がけたというから驚き。「庭に新しい植物を植えて楽しんでいますよ。今度来るときは、植物園みたいになっているかもね」と笑う義司さん。
「今度来るとき」という言葉に思わずときめいた。また、竹下夫妻に会いたい。
温かい気持ちになり、ちょっと名残惜しかったけど、お店を後にして次の目的地へ向かった。
宮古と世界の食材をかけあわせた本格フレンチを堪能
夕食に訪れたのは、2020年2月にオープンしたグランブルーギャマン。
東京で人気レストランを切り盛りしたシェフの木下威征さんが、宮古島に移り住んで開いたオーベルジュだ。
店名の“ギャマン”とは、いたずら小僧の意味。
ちょっぴり遊び心を取り入れたフランス料理が評判で、ライブ感あふれるオープンキッチンから提供している。
ディナーはコースのみ。その日に仕入れた旬の食材を使った料理が出てくるので、ゲストは食べる直前までメニューを知らされない。「ワクワク感を楽しんでほしい」と、笑う木下シェフ。
出される料理一つひとつに丁寧な説明があり、フランス料理の奥深さに驚きながら、ついつい話に聞き入ってしまう。
まず登場したのが、宮古島で採れた紅芯大根をメレンゲと合わせた泡ポン酢を付けて味わう、「秋なすと炙りしめサバのテリーヌ」。
普段食べ慣れている食材も、木下シェフのアイデアと技でまったく違った味が楽しめる。
ちょっと変わった食感もおもしろいけど、もちろん味もおいしくて、しばらく余韻に浸ってしまったほど。
どんぐりの実を食べて育ったというイベリコ豚の生ハムも、絶妙な塩加減で美味。
地元ではよく食べられているというお魚のカサゴをカラリと揚げて、柑橘系の果物や香味野菜とあわせて、さっぱりした味わいに。
気候風土が似ているプロヴァンス地方の料理法は、宮古の食材にはよく合うのだそう。
そしてメインに登場したのが、脂と肉のバランスが良いお肉とシェフも絶賛する、宮古牛のフィレ肉のステーキ。宮古牛の出汁で作った旨味たっぷりのデミグラスソースと、タスマニア産の粒状マスタードを付けて食べると、酸味と甘みのバランスがよく、口いっぱいにおいしさが広がり幸せな気持ちになった。
その土地の食材を使った料理は、食べるほどに心と体にエネルギーが満ちていく。宮古島に来たいと思う理由が、また一つ増えた。
旅の締めくくりは、お土産さがし
素敵な時間を過ごした宮古島の旅もいよいよクライマックス。
みやこ下地島空港ターミナルで狙うのは、ここにしかない限定商品だ。
「空港のロゴがデザインされた、ハイドロフラスクのボトルはおすすめですよ」と教えてくれたのはスタッフの小島若葉さん。
もう一つ、小島さんが勧めてくれたのが、ウミガメと飛行機が描かれたデニムのトートバック。
普段使いはもちろん、友達や家族のお土産にも喜ばれそう。
空港ターミナルは、インスタ映えスポットも多い。入り口近くには、毎年10月頃に飛来する渡り鳥・サシバの翼をモチーフにした壁画がある。訪れた記念にぜひ、写真をパチリ!
チェックイン後は、コーラルポートラウンジ内にある水上ラウンジでひと休み。
飛び立つ寸前までリゾートにいるような気分で過ごせるから、お気に入りの場所になりそう。
島の素材を活かした雑貨やアクセサリーも、車窓から見かけた風景も、心と体にエネルギーを満たしてくれたお料理も、そのどれもがとっておきの思い出となった。
思い立って、ひとっ飛びで暖かな沖縄の離島へ。
観光客の少ないオフシーズンだから、のんびりと過ごすことができ、地元の人たちとたくさん話せたことも嬉しかった。
濃密で贅沢な時間を過ごせた大人旅は、「もう一度、あの人たちに会いに行きたい」と思わせてくれる、心温まる旅となった。