伊良部島『佐良浜』の集落散策ツアー『やーがまくーがま』

2015年1月に宮古島との間に伊良部大橋が開通し、ぐっとアクセスしやすくなった伊良部島(いらぶじま)。長い間、海で隔てられてきた人口約6,000人の島は、カツオ漁の県内シェア8割を誇り、沖縄のほかの地域ではもう見られない伝統的漁法(※)の技術と文化が残っています。

※アギヤー 漁 (追い込み漁)で獲ったぐるくんの稚魚などの生き餌を撒き、近海でマグロやカツオを一本釣りする漁法。アギヤー漁は糸満海人によって生み出された漁法で、水深20~30メートルほどの海底に網を張り、数人がかりで泳ぎながら、潮の流れや海底の地形から魚が逃げる方向を読み、網へと追い込む。(伊良部漁業協同組合ホームページ『佐良浜の漁業』 )より。

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カツオ漁のメッカ佐良浜(さらはま)漁港がある集落は、漁港を臨む急斜面に張り付くように家屋が建てられ、それらが網の目のような路地でつながった街並みが特徴的。知らずに迷い込んで迷子になるのも一興ですが、今回は佐良浜出身のガイドさんと一緒に、集落を散策してみました。

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待ち合わせは獲れたてのカツオをいただける漁協直営店『漁師屋』の前で。ガイドさんは、漁協の職員でもある普天間一子(ふてんまかずこ)さん。佐良浜生まれ、佐良浜育ちの生粋の池間民族です。池間民族とは、「誇り高き血脈を自負する海洋民族(伊良部漁港ホームページより)」と謳われる人々のこと。彼らは、1720年に池間島から分村して海を渡り佐良浜に村をつくりました。これが、現在の集落の始まりです。

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(写真:最初の見どころは、拝所となっている井戸『アガイノカー』 )

1930年ごろから戦前までは、「親子二代で南方漁業に出向けば1年で御殿が建つ」と言われていたというカツオ漁の全盛期。佐良浜漁師たちは、パラオをはじめ、サイパンやパプア・ニューギニア、ソロモンやボルネオまで、カツオの群れを追って勇猛果敢に海に挑んでいました。

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(写真:がじゅまるの木の根っこと塀がからみあった不思議なトンネル)

男たちの留守中、島を守ったのは女たち。今も残るニガイ(願い・祈り)の文化は、航海の無事と大漁を祈る、暮らしに根ざした切なる願いから生まれたものなのです。周囲2kmほどの小さな集落には9箇所もの拝所があり、信仰心の強さがうかがい知れます。そんな集落を歩いて行くと、様々なシーンに遭遇。

住人のおばあと窓越しに会話を交わしたり。

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細い筋道から、漁港や宮古島が見渡せたり。

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郷愁を誘う錆びついたバイクの残骸や。

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魔除けのスイジ貝。

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同じおじいに何度も遭遇したり。

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もちろん、猫だっています。

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人工物と元からあった自然の境目がすこぶる曖昧な佐良浜集落です。

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さて、『やーがまくーがま』とは、「あっちの家に寄り、こっちの家に寄り」という意味の言葉。独特の言い回しからは、集落の人同士がお互いの家を気軽に行き来する、温かな習慣が透けて見えます。散策ツアーでも、その名のとおり、地元の方のお家にお邪魔することができます。この日上げていただいた濱川美代さんのお家には、家族の人数分まつられた神棚がありました。

miyako-img12ツアー参加者と濱川さんは初対面ですが、ガイドの普天間さんとは何十年も同じ地域で暮らしてきたご近所さん同士。普天間さんが会話の先導役となってくれることで、打ち解けた空気の中でお話ができます。

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「神様は、いーーーーーーっぱいいるよ」と話す濱川さん。聞けば、 台所には火の神様、門や、家そのものにも神様がいるのだそう。ニガイ(願い・祈り)は、夫婦円満を願う『夫婦ニガイ』、試験合格祈願の『試験受けニガイ』、健やかな学生生活を願う『生徒ニガイ』など様々。60日の干支のサイクルを1巡として、家族全員のニガイをしているそう。ニガイをしていると子供達は「今日は誰のニガイかー?」と尋ねるそうです。お邪魔した日の前日もニガイをしたばかりだそうで、その時にお供えしたものと同じ手造りの神酒(みき)を飲ませてくださいました。神酒(みき)は、雑穀のアワを発酵させたもの。材料のアワそのものも自分の畑で栽培しているそうで、アワを見たことがなかったツアー参加者のリクエストに答えて、倉庫から持ってきてくれた一幕も。神様にお供えするために、時間と手間をかけてアワを育てる、という営みから、神様とのつながりを感じながら生きる人の心を感じます。一期一会の交流から生まれ、その土地の本物に触れる”一度きりの旅”がそこにありました。

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『やーがまくーがま』は、すぐそこにあるもっと深い世界を、知らずに通り過ぎてしまわない為の、”人との出会い”をくれたのでした。参加する日によって、お邪魔するお家もそれぞれ。伊良部島に訪れる際は、偶然の出会いを楽しみに、ぜひ『やーがまくーがま』を試してみてくださいね。

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【やーがまくーがま】
価格/ 一人 ¥2,500(税込)
最低催行人数/最低催行人数=2名 ※1名の場合¥5000(税込)で催行
予約/前日17:00までに電話予約要
実施可能日/毎日
実施時間/11:30~13:00(90分/時間変更は応相談)
集合場所/漁師屋(漁協前) ※ 小雨催行。雨具をご持参ください。

Information 基本情報

やーがまくーがま(集落散策ツアー)

住所 沖縄県宮古島市平良久貝870-1 島の駅みやこ内
TEL 0980-73-7311
備考 宮古島ひとときさんぽツアーカウンター
URL http://www.plannet4.co.jp/hitotokisampo/tour-04.php
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