尚円王史跡と生徒たちの句碑物語
琉球王国の第二尚氏王統の始祖として知られる尚円王(しょうえんおう)は、この伊是名島(いぜなじま)で生まれた。
2015年はちょうど生誕600年ということで、島内各地にある尚円王ゆかりの史跡を訪ねてみた。
そこで目にとまったのが、木製の素朴な句碑だ。
「尚円王 ゆびのさすとこ ひろいうみ」
などと、子どもたちのたどたどしい文字と素朴な感性が暖かい気持ちにさせてくれる。
これがどの史跡にも必ずと言っていいほど立っているのだ。
島の人に聞くと、じつはこの句碑にもドラマがあったのだという。
かつて伊是名小学校の生徒が担任の先生と、こんな約束を交わした。
「島内で俳句を詠んで、その場所に句碑を立てよう」
ところがその後、先生は転勤で島を離れることになってしまい、約束は果たせずに終わってしまった。
時は流れてその生徒たちも立派な中学生になったが、小学生時代に果たせなかった「約束」のことだけはずっと心に残っていた。
そこで「あの約束を実現させよう!」と再度立ち上がった中学生たち。
保護者や島の人にも協力してもらい、費用を捻出する為にサトウキビ畑のアルバイトをするなど、苦労しながら自分たちの手で句碑を完成させた。
完成の日には、約束を交わした小学校の元担任の先生もその場を訪れて一緒に喜びを分かち合ったという。
そして生徒たちの手によって島内の名所に立てられた句碑。
これらには、同じ生徒が小学生の時に作った俳句と、中学生のときに作った俳句の両方を記してある句碑もある。子どもたちの成長が目に見えるようだ。
伊是名の史跡を訪ねた時は、そんなドラマを思い出しながらこの句碑を読んで欲しい。
尚円王御庭公園にある尚円王像の前で
尚円王の家族が眠る伊是名城跡にも
沖縄の伝統民家貸します!
しっかりした赤瓦屋根や縁側が特徴ある沖縄伝統の古民家。
かつては当たり前だったこのような古民家も、時代とともに減っているという。
昔ながらの風景が多く残る伊是名島でも同じで、家を継ぐ人がいなかったり、他の地に引っ越してしまったりして、空き家になった家が少なくない。
そこで、そんな島内の古民家を再生し、訪れた旅人の為に貸し出すというプロジェクトがあると聞いて、NPO法人「島の風」を訪ねてみた。
案内してくれたのは伊是名集落にある「がーぺーちん」という古民家。
古民家とは言うものの、内部は現代風にリフォームされていて快適に過ごすことができる。
このリフォームもすべてNPOスタッフの手でやっているというから驚きだ。
家の居間に座ると、まるでおばあちゃんの家に来たような落ち着きを感じる。
そして縁側に座ってみると、島ならではのゆったりした時間が過ぎていく。
ちなみにこの古民家は宿泊滞在だけでなく、離島へ移住したい人の為に試しに暮らしてもらう「試住(しじゅう)」というプログラムにも使うのだそう。
今回はスケジュールの都合で宿泊することができなかったが、
次回訪れたときにはぜひゆっくり泊まってみたい。
沖縄ならではの伝統民家。家畜舎や井戸などもそのまま残っている
米どころの新名物を食す
この島は沖縄有数の「米どころ」でもある。
しかし、せっかく作った米も、割れたり小粒だったりすると規格外となり市場に出すことができないこともある。
そんな米を活かして麺にしたのが「太陽麺」だ。
島の食堂でこの麺を使ったメニューを食べてみた。
この日は暑かったので「太陽とトマトの冷製麺」を注文。
運ばれてきたのは、まさに冷製パスタそのもの。見た目も涼しい大葉とトマトのコンビネーション。
「辛みはお好みで調整して下さいね」と、唐辛子を使ったホットソースが添えられる。
一口食べてみると、まるでイタリアンレストランのパスタのよう。
軽い酸味の効いた味付けに、本格的な腰の強いアルデンテ麺が美味。
この食堂ではお米のスイーツなども提供しているので、デザートもおすすめ。
パスタのような「大葉とトマトの冷製麺」