懐かしくて幻想的な癒しの郷

フクギ並木に守られて

沖縄本島の北西約60kmに位置する渡名喜島(となきじま)へやってきた。
さっそく島の集落内を通る細い小道をのんびりと歩いてみた。
ここは昔ながらの瓦屋根の建物が数多く残り、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている。
昔のままのしっとりとした雰囲気の小道は、そこだけ時が止まったような感覚にさせてくれる。

・・・と、いつの間にか空が暗くなり、横殴りの激しい雨が吹きつけてきた。
台風のような風がビュウビュウと吹き、大粒の雨がまわりの木々や地面にバチバチと当たっている。
夕立だ!

どこか雨宿りができる場所はないかと、持っていたビニール袋を頭に乗せ、荷物を胸で隠しながら足早に進んだ。
ところが、ある場所で雨風がピタッと止まったのだ。
でも後ろを振り返ると、向こうでは相変わらず激しい雨風が吹き荒れている。

あれ、なんでだろう?

周囲を見回してその理由がわかった。そこは両側をフクギ並木に囲まれた場所だったのだ。
台風の多い沖縄では、古くから葉の密生したこのフクギが防風林として軒先などに植えられてきた。
この集落に建つ民家はほとんどがこのフクギ並木に囲まれ、島独特の強い風雨から人々の暮らしを守っている。
この美しい並木が、自分を強い雨風から守ってくれたのだ。

しばらくすると雨が上がった。
風もやみ、ザワザワと音を鳴らしていたフクギ並木はまた元のように静けさを取り戻した。
さて、もう少し島内を散歩してみようか・・・。
 
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強い横殴りの雨にも強いフクギ並木
 

集落が美しい理由とは?

渡名喜島の集落にある小道には、白砂が敷き詰められているのも特徴だ。
ところがそんな道を歩いていると、砂の上に不思議な筋状の模様が浮かんでいることに気付いた。
 
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風のせいではない、何かでなぞったような人工的な模様だ。
不思議に思いながら歩いていると、どこからか「シャッ、シャッ」という規則正しい音が聞こえてくる。
あっちの方からもシャッ、シャッ。こっちからもシャッ、シャッ。
耳を澄ますとあちこちで鳴り響いている。

角を曲がってその音の意味がわかった。
島の人が竹ボウキで小道を掃いていたのだ。
挨拶をすると、ニコッと笑って会釈してくれた。

そして、再びシャッ、シャッ、シャッ・・・。

それは朝だけでない、昼過ぎでも、夕方でも、集落の道にはいつもほとんど葉っぱやゴミは落ちていない。
聞けばこの島では、子どもも大人も一緒になって、早朝にラジオ体操と集落の掃除をする「朝起き会」という長年続く習慣もあるという。
それだけ島の人は自分たちの集落に誇りを持ち、そして愛しているに違いない。
渡名喜島の癒しの秘密はここにもあったんだなぁ。
 
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フクギのトンネルでも、近所に住む人がいつも道をきれいに掃除している
 

夜を照らす温かな光

渡名喜島の美しい伝統集落に夕暮れが訪れた。
夜の訪れを教えてくれる島内放送の音楽が流れると、街灯のほとんどない暗い集落内を、道の脇にある照明がほのかに照らし出した。
その光景はとても幻想的だ。

これは渡名喜島名物のフットライト。
元々は村道1号線という島のメイン通り(・・・とはいっても細い小道)から始まったが、今では集落内のあちこちで見られるようになった。

足元が浮かび上がる幻想的な小道を歩いていると、買い物帰りのおばぁや仕事を終えて帰宅する人々とすれ違う。
そんな時、多くの人が「こんばんは」と声をかけてくれる。
知らない土地を訪れた旅人にとって、ホッとする瞬間だ。
光だけでなく、人も温かいのが渡名喜島だ。
 
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幻想的な光が集落内の小道を照らし出す
 

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