絶対元気になる! パワフルな「たいらファミリー」と共に 自然が残る神秘的な石垣北部エリアへ。

今から12年前、初めて八重山諸島を旅した。3泊4日の石垣島&波照間島。同じゲストハウスでたまたま一緒になったメンバーは、それぞれ住まいが日本各地とバラバラなのに今でも連絡を取り合っている。たった一日、長くて二日、偶然、同じ宿にいただけの仲が10年以上も続くなんて、本当に信じられない。

勝手に、八重山諸島の奇跡と呼んでいる。開放的な日差しと夜も明るく照らすような星空に、心を最大限に開いていたからかもしれない。2度目の訪問となった石垣島滞在では、さらに開放的な八重山の太陽みたいな家族に出会った。

 

着いた瞬間から楽しい! 手作り感満載の看板。

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今回の宿泊先は「石垣島・民宿・食堂 たいらファミリー」。石垣市内から東側の国道を車で40分ほど北上した伊原間(いばるま)エリアにその宿はある。門の前に掲げられた店の看板は海辺に打ち上げられた発泡スチロールで作った自家製。真っ赤な太い文字が、力強く迎えてくれる。

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宿のオーナー、平良正吉・八重子夫妻。正吉さんは生粋の海人(うみんちゅ)、八重子さんは「伊原間の八重ちゃん」として、ラジオやテレビに出られたり、宿や公道に花を植えたり、とにかく明るくハッピーな方。たいらファミリーは県内外で三線ライブも行うほか、民謡ショー、創作舞踊指導、拳法指導までできるすさまじく芸達者な家族でもある。

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到着早々、「さて、まずは海に行こうかね」と正吉さん。「その前にちょっと衣装替えしてくる」といったん姿を消して戻ってきたらこの姿。蛍光ピンクのTシャツに、オレンジのハーフパンツ。衣装まで明るい。頼まなくてもカメラを向ければポーズを決め、口を開けばダジャレがあふれ出てくる。終始こんな感じで、周りのみんなを笑わせてくれる。

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海に向かう途中にお散歩した、ハイビスカスの並木道。観光地ではない日常の道なので、静かな通りを思いのままに散策できるのが嬉しい。木々が自然の木陰を作ってくれて、両脇にふさふさと茂った葉がトンネルのように空でふれあい、さぁどうぞ奥へ・・・と呼んでくれているようだ。

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民家の脇からふっと曲がって小道を歩くと、視界の先には海! 生活と海が近いというか、生活の中に海があるというか。まるで庭でも散歩するかのように、空や海や砂浜の様子を見ながら歩く正吉さん。

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海には津波で移動してきたとされる津波石が点在していて、中でもビーチにひときわ大きく鎮座しているのがこの「巻石」。触れると子宝に恵まれると言われており、この石を目指してやってくる観光客も多数いるそう。

「せっかくだから触ってきな」と促されて、いいパワーが私にも流れてくるといいなと心の中で願いながらそっと中心部に触れてきた。

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八重子さんは貝探しの名人だった。砂浜でふと足を止めては小さな貝を拾い上げる。「こんなに小さくてもいい出汁が出るよ。お父さんに渡してお汁を作ってもらいな」と言いながら、ひょいひょいと私の手に貝を乗せていく。

海岸沿いの植物にそっと手を触れて、「これはモンパノキ。新芽を摘んで天ぷらにするとおいしいよ。消毒にも使えるの」と、見るものすべてを愛おしそうに、伊原間の誇りのように話してくれる。「今日も美しいね」と、平良夫妻が言う。何年、何十年と見続けてもなお、自分たちの土地に日々感動している。そんな姿にこちらが感動してしまった。

 

島の空気を感じながら、空の下で夜食会。

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海岸散歩を終えるころにはゆっくりと太陽が沈み、肌の熱を少しずつ冷ましてくれた。
さぁ、ここから、めくるめく夜が訪れる。
昼とは違った雰囲気の宿の看板。ファミリーの文字を縁取るドット柄! 鉢植えやトイレのオブジェに至るまで、宿のあちこちに貝殻など自然のものを使ったお手製の品がある。眺めていると「ハイ、これプレゼント。伊原間の思い出にね」と美しい珊瑚と貝殻をくれた。

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さて、やるか! と厨房に向かった正吉さんが見る間に仕上げてしまった5品。魚は煮つけと汁物に。「このあたりのは、太くてぬめりの強いいいモズク」と太鼓判のモズク酢には最後にニンニクをちょこんとのせた。
浜で拾ってきた貝はソーメンの椀物に一役買い、スライスした甘いタマネギにシーチキンとタコを合わせた一皿も。

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ビールと泡盛、お茶を用意したらお孫さん二人も一緒にテーブルを囲んでみんなで乾杯!
食堂もあるけれど「気持ちの良い夜だから、外にしようか」と、席を中庭に設けてくれた。
真っ暗な空の下、ここだけ煌々と照らされるディナー会場。

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宴の佳境は正吉さん&お孫さんの三線ライブ。やわらかに吹く風の中、張りのある透明な声が空へと吸い込まれていく。テーブルに座る八重子さんたちはペットボトルを太鼓代わりに、ドン、ドンと軽快にリズムを取りだし、弾いて、叩いて、唄って、踊って・・・、感動的な宴を堪能した。

門の脇に立派なフクギの樹があって、中庭に面した小上がりの屋根の上に不定期に実が落ちてくる。暗闇のなか、トタン屋根が「ゴン」「ゴンゴン」と急に鳴りだす。実が落ちるそんな音すら、民謡ライブに必要な音に聞こえてくる。

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そして、夜の愉しみはディナーだけでは終わらなかった。「さて、海に行ってみようか」ともう一度浜辺へ。「今日は月が出ているから星が見えないかもしれないけれど。お酒をコップ一杯だけ持って、みんなでビーチに空を見に行こう」と促されて向かった。

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耳には静かに打ち寄せる波の音。周りには誰もいなくて、コップを倒れないように砂浜に少しだけ埋めたら、ごろんと寝転がってみる。「きれいだなぁ」「すばらしいなぁ」って、一番に口を開くのはやっぱり正吉さん。まるで初めて見た景色みたいにうっとりと語る。そしてまたわたしは感動してしまうのだ。足元のすばらしさを知っていることは、なんてかけがえのないことだろう。月灯りに照らされた空を眺めながら、風の音を聞きながら、人々に愛され、人々に守られる土地のことを思った。

 

次の日は、一夜だけ咲くロマンチックな花「サガリバナ」を一目見に。

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石垣島では、ロマンチックな花を見ることができる。「サガリバナ」というその花は、夕方から開きはじめ、夜に最も大きく花を広げ、夜明けと共にその花を落とすことから別名「一夜花」ともいわれている。

石垣島北部に「平久保サガリバナ群落植樹の森」があり、その年の気象状況にもよるが、およそ6月下旬~9月までの間、美しく儚い姿に出合えるという。訪れた時はもう季節が過ぎた後で濃い緑の樹木だけだったが、樹の下に目をやると落ちた花がまだわずかに残っていて、名残を見つけることができた。

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薄い蛍光ピンクの色を放つ、ホワホワと綿毛のように柔らかな花。このかわいらしい花が、静かな夜に一面に咲き乱れる景色を、そっと目を閉じて想像してみる。辺りは星空観測でも有名な土地。サガリバナの頭上には満天の星空があり、きっと息をのむ光景に違いない。

旅では、目的にしていたものを見られないこと、体験できないこともある。時期がずれていたから、天気が悪かったから、時間がなかったからと理由は様々。でも、旅にはいつも「また、次の機会に」がある。せっせとすべてをこなすよりも、できなかったことが1つか2つあったほうがなんだか素敵だ。

ロマンチックなサガリバナは次の機会に・・・。そう言い聞かせて、最後のスポットへ向かった。

 

最後はやっぱり、北部にある絶景ポイントへ。

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旅の締めくくりに石垣島の北端にある「平久保崎灯台」へ。紺碧、エメラルドグリーン、淡いブルーとさまざまな青色を広げた海をバックに、白亜の塔がそびえる。辺りは放牧地になっていて、絶景を独り占めするかのように牛がのどかに歩く。毎日この景色を堪能していることをうらやましく思いながら、海をじっと見つめて、目に焼きつけた。

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初めての滞在となった石垣島の東部・北部エリア。何年住んでも、何十年暮らしても、「伊原間が最高」と口にする家族に囲まれて丸一日を過ごすことができた。目や耳や舌で感じることができる島のエネルギーに、元気が出てくる。夜が更けるまで食べて飲んで、一緒に笑い倒し、生きているって楽しい! と活力を与えてくれた「たいらファミリー」は、私にとって間違いなく石垣島の元気の源だった。

Information 基本情報

石垣島 民宿・食堂 たいらファミリー

住所 沖縄県石垣市伊原間97
TEL 0980-89-2588
備考
URL https://www.facebook.com/tairafamily/
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