水牛とともに海を渡る

交通手段は水牛車

西表島の対岸にある由布島へのアクセスは、ガイドブック風に書くと「水牛車で約15分」。
高速船でもない、タクシーでもない、「水牛車」で島に渡るのだ。

切符を買って乗り場に行くと、おじぃがゆったりとした雰囲気で座っている。
「ちょっと待ってね」とおもむろに立ち上がると、水牛を引っ張ってきた。
「はい、どうぞ」いそいそと乗り込む乗客たち。

時間になると、よいしょと水牛が歩き出す。
エンジンがないから音は静かだ。遠浅の海にはバシャ、バシャと水牛の足音が響くだけ。
静かで平和な時が流れている。

おじぃが三線を引きはじめた。タントン、タントン、「デイゴの花が咲き~」と気持ちよさそうに唄うおじぃ。三線の音色と唄声が、夕日に溶け込んでいくようだった。
 
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海の上を歩く由布島の人

由布島もかつてはたくさんの人が住んでいた。公民館や学校もあったという。
昭和44年の台風で大きな被害を受けて、多くの人が島外に移住したが、水牛車のおじぃなど何人かは今でも住んでいる。
実はその人たちは、島外に用事があると遠浅の海を水牛車に乗らずに歩いて渡る。
島内にある植物園のスタッフさんも、仕事が終わるとやっぱり海の上を歩く。
「最近は地球温暖化でさ、昔より海面が上昇して時々ここまで水が来るよ」と、腰のあたりを指すおじぃ。こんなところにまで地球温暖化の影響があったとは!
でも、そんなときはどうするんだろう? おじぃに聞いたら「そのときは水牛車で渡るさ」だって。
 
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