那覇空港から飛行機で約30分。ハテの浜などの美しい海で知られ、島全体が県立自然公園に指定されている久米島。琉球王国時代には大陸と王国の寄港地として栄え、今でもその歴史を感じさせる史跡や建造物の数々が残っている。昔ながらの風情を残す集落散策や、約400年もの歴史を持つ久米島の伝統工芸「久米島紬」の織り体験など、今回は海だけではない久米島の魅力を発見する旅に出かけた。
久米島博物館で散策の予習を
まずは久米島の自然、歴史、文化について学ぶ為に久米島博物館に立ち寄った。常設展示室は、久米島の自然、時代の移り変わり、久米島の遺宝、島の暮らしの四つのコーナーに分かれており、一通り島の歴史を学ぶことができる。山の動植物の原寸ジオラマと実物資料の展示コーナーでは、久米島の自然が空間全体で忠実に再現されていて驚いた。島の成り立ちの様子も分かりやすく模型や化石標本を見ながら学べ、琉球王国時代の集落や、寄港地として重要な役割を果たしていたことが分かる展示物などがあり興味深い。これから向かう真謝(まじゃ)集落は、琉球王国時代に地方行政機関だった為、現在の役所にあたる蔵元があり、今でもその跡地として残っているそうだ。観光をする前に久米島のことを知ることができたので、散策がより一層楽しみになった。
「島の学校 久米島」の体験プログラムで真謝集落を巡る
今回参加するのは、「島の学校 久米島」が提供する体験プログラムのひとつ、真謝集落散策コースだ。学校という響きがなんとも懐かしく、わくわくする。ガイドのヒデさんと待ち合わせ、美崎小学校へ。小学校の門の裏に書かれた「しにうむさん」とは沖縄の方言で「とても楽しい、楽しむ」という意味。教室の窓から「はいさーい!」と大きな声で挨拶してくれた児童の笑顔がそれを物語っているようだ。こちらも「しにうむさん」の気持ちで集落散策スタート!
昔ながらの風情を残す真謝集落
フクギが立ち並ぶ真謝集落は、昔ながらの風情を残すどこか懐かしさを感じる集落だ。歩いていると道の多くがうねうねと迷路のように曲がっていることに気付く。それもそのはず、台風対策で風がまっすぐ通り抜けていかないようにする昔からの工夫だそう。赤瓦の家々の庭先には美味しそうなパパイヤやマンゴー、グァバが実っており、甘い香りが漂う。家の門の奥にある目隠しは屏風(ヒンプン)といい、魔除けの意味もあるそうだ。屏風は普通石垣で作られていることが多いが、竹垣で作られたものや、月桃を植えて屏風代わりにしている家など、個性があって見ているだけでも面白い。両脇には門番のシーサーもしっかり鎮座している。レンタカーでは通り過ぎていたであろう集落の道に沖縄の原風景を感じた。
歴史を感じる旧仲里間切蔵元跡石牆
最初に向かったのは、美崎小学校のすぐ隣にある旧仲里間切蔵元跡石牆(きゅうなかざとまぎりくらもとあとせきしょう)。1700年代半ばに完成したといわれる国の重要文化財だ。琉球王国時代、地方行政機関の役割をしていた役所の石垣が今でも残っている場所で、石垣は珊瑚石灰岩で造られており、四隅を丸く加工し隙間なく積まれている。アーチ型の通用門が特に美しく、堂々と佇む姿からは当時の石造技法の技術の高さを感じることができた。
島民への感謝の贈り物、天后宮
続いて向かったのは県指定有形文化財建造物の天后宮(てんこうぐう)だ。航海の神様である、媽祖(まそ)を祀ったお宮で菩薩堂(ブサードー)とも呼ばれている。中国の全魁(ぜんかい)という冊封使の船団が真謝港沖で台風に遭い、座礁したところを島民が助けたことに感謝し、尚穆王(しょうぼくおう)を通じて建立されたものらしい。島民の迅速な救助のおかげで一人の死者も出さずに済み、救助後も蔵元で手厚くもてなしたという。 また、赤瓦の屋根が重なった二重の屋根も珍しく印象的だ。旅の安全を願って手を合わせると媽祖像の穏やかな表情に心が和んだ。
真謝のチュラフクギで記念撮影
集落散策の最後に向かったのは、県指定天然記念物の真謝のチュラフクギ。県道の真ん中に40メートルにもわたって続くフクギ並木は存在感抜群で人気の観光スポットになっている。フクギの木は、防風林として台風から家を守り、福を招く木ともいわれている。ちなみにチュラフクギの「チュラ」とは美しいという意味。このフクギにぴったりの名前だ。ここに来たら是非、縁起のいいフクギの前で幸せを願っての記念撮影をおすすめしたい。
久米島紬の里ユイマール館で久米島の伝統文化に触れる
「島の学校 久米島」プログラムの散策を終えた後に訪れたのは、久米島紬の織り体験ができる「久米島紬の里ユイマール館」だ。久米島紬は製作技術が国の重要無形文化財に指定されていて、日本の紬の発祥ともいわれている。その製作工程は、糸を染めるところから織りまで全ての作業を一人でやるのが特徴だ。蚕(かいこ)からとった真綿で糸をつむぎ、久米島に自生する様々な植物を使って草木染めや泥染めを繰り返し、はた織り機で時間をかけて織り上げる。長く丁寧な作業を経て完成する久米島紬には、織り子の想いと島の風土も織り込まれている。敷居が高いと思っていた紬織りだが、ここでは気軽に体験できるとあって楽しみだ。
初めての紬織り体験に挑戦!
今回挑戦するのはコースター織り。8種類の柄から選ぶことができ、柄を決めたら早速紬織りをスタート。織り子さんが丁寧に教えてくれるので安心だ。両足を織り機に乗せ、片方の足を踏むと縦糸と横糸の間に隙間ができるのでそこに糸を通し、足を踏み替えて糸の隙間を詰めるために「おさ」という器具を引く。単純に見える作業だがこれが意外と難しい。しばらくやっていると、「慣れてきましたね、織り機のリズムがいいですよ」と褒められて、いい気分。難しい仕上げの部分は織り子さんがやってくれた。30分ほどで完成するので観光の合間にも体験しやすい。淡く美しいグリーンはさとうきびで染めた色だそう。作り手によって色味も変わり味わいがある。紡がれている糸の一本一本に久米島の伝統が息づいている。このコースターを見るたびに久米島の歴史に思いを馳せることができそう。これはとっておきのお土産だ。
ガイドウォークに参加したことで、実際に自分の足で島の歴史をなぞり、より理解を深めることができた。案内してくれたガイドさんや現地の方とのあたたかな交流は、この旅をより思い出深いものにしてくれた。海の綺麗さだけではない、久米島の楽しみ方をぜひ体験してもらいたい。
Information 基本情報
久米島博物館
住所 | 沖縄県島尻郡久米島町嘉手苅542 |
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TEL | 098-896-7181 |
備考 | 営業時間 9時~17時(最終入館16時30分) 入館料 一般200円(学生、団体割引あり) |
URL | http://sizenbunka.ti-da.net/ |
久米島紬の里 ユイマール館
住所 | 沖縄県島尻郡久米島町真謝1878-1 |
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TEL | 098-985-8333 |
備考 | 営業時間 9時~17時(最終入館16時30分) 入館料大人200円、中学生以下100円 コースター織り体験1人2,100円 |
URL | http://kume-tumugi.com/ |